前回は、血管と糖尿の関係についてお話しましたね。
糖尿、加齢、高血圧、高脂血症、内臓肥満の5つがあると、血管はどんどん弱っていきます。
しかもこの5つは鎖のように絡み合っているので、一つが生じると芋づる式に他の症状を呼び寄せてしまい、加速度的に血管を弱らせてしまう困ったやつらなのです。
今回も、糖尿と血管の関係について、そして大切な血管をしっかり守るにはどうすればいいのか、考えてみましょう。
急激な血管の弱体化 Tさんの場合
糖尿だと血管が弱っていく、という実例を患者さんの声として、ご紹介したいと思います。
Tさん
「うちは親父が糖尿だったんです。でもすごく元気な人で、持病があるって言うと人に驚かれるくらいでした。
そのせいでしょうね。糖尿は大変な病気っていうイメージがなかったです。それよりガンのほうが怖いと思ってたくらいでした。
だから自分が50歳を前にして糖尿になったときも危機感はほとんどなかったんです。「薬を飲んで、食べ物を気をつけたらいいんだろう。知ってるよ」ってくらいで。
ところがふたを開けてみてびっくり、親父とは全く違ったんです。喉も渇くし体もふらふらする。何をやっても疲れてしまって。すぐにインスリンの自己注射が導入されました。
親父と同じ先生に診てもらってたんですが、食事制限は親父のよりずっと厳しく言い渡されました。
そうこうしていると、ものが見えにくくなりました。老眼の始まりかと思っていたら、糖尿病網膜症だと言われて。
無知でしたので、何で糖尿なのに目が悪くなるんだと思いましたよ。ほうっておいたら失明の危険性があるといわれて愕然としました。しかも同時期に尿たんぱくもでてしまって。知らぬ間に非代償性腎不全に進行していたと言うんです。
三大合併症のことはなんとなく知っていましたが、まさかこんなに早く来るとは。坂道を転げ落ちるように一気に悪くなっていくので、恐ろしさに戦慄しました。
診断から3年半で透析一歩手前まで行ったんですよ。これこそが糖尿の恐怖なんだと。医者が言うには、僕は元々内臓脂肪が多くで高血圧、高脂血症があったために、普通の糖尿の人の何倍ものスピードで血管がやられていったんだそうです。
元々痛めつけられてた血管に、高血糖状態が続いたため一気に血管が壊れて言って、次々と合併症が出てきたんでしょう。確かに親父は痩せ型で血圧も高くない。僕と違ってもともと血管が健康だったから持ちこたえられたのでしょうね。」
Tさんは現在、透析は免れたものの、網膜の状態は深刻で光凝固術を受けることになったそうです。
Tさんの言うように、もともと高血圧や高脂血症、内臓肥満で血管が弱っている方が糖尿病を患うと、一気に症状が進行してしまいます。
そうならないために、糖尿の治療はもちろんのこと、日ごろから血管の状態を把握して大事にしていきたいですね。
血管を守るためには
血管を守るためには、現在の血管の状態を調べることから始まります。
血管の状態を調べるには、こんな方法があります。
1.頚動脈エコー→血管の壁の厚さを調べる
簡単に血管の壁の厚さを調べることが出来る検査です。
血管壁の厚さをIMCといいます。IMCの厚さは通常1mm未満で、それ以上になるとと動脈硬化が疑われます。首の皮膚の上から超音波を当てるだけで、痛みや被曝がない検査なので安心して受けられます。
2.FMD→血管の弾力性を調べる
FMDとは血管の弾力性のことです。FMD値が大きいほど柔軟でいきいきした血管、小さいほど傷んだ硬くなった血管ということになります。検査は20分ほどですぐに結果がわかるのでうれしいですね。腕に血圧計のようなものを巻きますがこちらも痛みの心配はありません。
3.CAVI→血管の硬さ、詰まりを調べる
血管の柔軟性をCAVIといいます。寝た状態で両腕・両足首の血圧と脈波を測定します。動脈硬化が進んでいるほど数値は高くなり、9.0を超えると危険信号といわれています。時間は5分程度で、こちらも血圧測定感覚でできる簡単な検査です。
これらの検査を組み合わせることで、現在の血管の状態を正しく評価することが出来ます。血管年齢や予想寿命までもわかるそうですよ。自分の予想寿命・・・怖いけどちょっと調べてみたいですよね。
では、血管にこれ以上ダメージを与えないようにするにはどうしたらいいでしょうか。
いつもの食事の中で簡単に出来ることを3つ取り上げてみました。
・オメガ3の多い食事を心がける
オメガ3脂肪酸とは、血液中の脂質濃度を下げてくれる健康的な脂質です。なんと、コレステロール、中性脂肪を下げるだけではなく、高血圧と高脂血症まで予防効果があります。
それだけではありません。網膜の黄斑変性にも効果があるのです。糖尿で悩まされている方にとってはまさに理想的な栄養素ですね。
オメガ3脂肪酸は、青魚、えごま油、亜麻仁油、くるみ、緑黄色野菜などに含まれています。普段使用している油をえごま油に変えれば、毎日少しずつ摂取することができますね。えごま油はクセがなく使いやすいですが、熱に弱いので加熱調理には向きません。カルパッチョにしたり、ドレッシングとしてサラダなどにかけたりするのがお勧めです。また酸化しやすい性質があるので、保管時は出来るだけ密閉して酸素に触れさせないようにしておきましょう。
・葉酸を積極的に摂る
最近の研究によると、葉酸が不足するとホモシステインが増加するのだです。ホモシステインはコレステロールと並んで動脈硬化を促進させる最近注目の物質です。葉酸はレバーや焼き海苔などに特に多く含まれています。また枝豆や納豆にも含まれているので、積極的に豆類を摂るようにしましょう。
・塩分の摂り過ぎに気をつける
糖尿になるとついつい糖質制限ばかりに目が行きますが、高血圧の予防も大切です。気をつけたいのが、塩分摂取。
ラーメンのスープを飲み干すなんてもってのほかですよ。また、しょうゆや塩は食品に直接かけず小皿にとってつけることで味が感じやすくなり、使用量を減らすことができるので、おすすめです。
日常生活で少し気をつけるだけで一日2−3グラムの塩分を減らせるそうですよ。知らないうちにとってしまっている塩分ありませんか?
いかがでしたか?
血管と糖尿のこわ〜い関係。お分かりいただけたでしょうか。
しかし案ずることなかれ、なんと血管年齢は巻き戻すことが出来るのだそうです。今からでも十分間に合います。
ゆでたてのマカロニのような柔らかくぷりぷりな血管を手に入れましょう!
今回のまとめ
・血管が弱っていると、糖尿病の進行がぐんと早くなる
・簡単な検査で血管の状態をしらべることができる
・オメガ3、葉酸を毎日の食事で積極的に摂り入れる
・食生活に応じて減塩の工夫をする
→ 関連項目 糖尿病と肝臓のお話 -その1
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