糖尿病と胃無力症-その1

糖尿病と胃無力症-その1

「さいきん胃が悪くてね」「食べるともたれるんだよなあ」等々、胃に関する不調はだれにとっても身近なものであります。
俗に「胃は心の鏡」ともいわれるように、日常のちょっとしたストレスによっても不調に陥ることがあります。

ありふれた症状だからこそ、胃の不調は軽視されがちです。「胃が痛いなんて病気のうちに入らない」と考えている人もいるかもしれませんね。

しかし、糖尿病患者にとっては「胃の不調」というのは見過ごしてはいけないサイン!「たかが胃の不調」と思うことなかれ。

今回は、見逃してはいけない「胃の不調」についてお話します。

胃無力症とは

今回お話しする「胃無力症」は、三大合併症のうちのひとつ「糖尿病性神経障害」の一種です。
糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症と並んで、糖尿病三大合併症のひとつである糖尿病性神経障害は、合併症の中でも発症頻度が高く、しかも糖尿病発病後の比較的早い時期から症状が現れるのが特徴です。

ある調査によれば、糖尿病を発症してから10年経つと、約2人に1人が糖尿病神経障害を合併しているとのこと。
たいへん身近な合併症なのです。

糖尿病性神経障害は、日常的に高血糖にさらされることで徐々に血管が硬くなり、引き起こされます。
生命維持機能をつかさどる神経系統は、全身の血管から栄養を受け取っているため、糖尿病によって血管が障害されると神経系統もまた障害を受けてしまうのです。
神経系統には知覚神経や運動神経などいくつかありますが、今日取り上げる「胃無力症」は、その中でも「自律神経」に関係があります。

自律神経は自分の意思で動かすことができない神経で、呼吸・頻拍、消化・吸収などに関わる臓器の活動、血圧・体温の調節など、本人の意思で動かすことのできない体内活動を制御しています。

たとえば、心臓。心臓は自分の意志で調節することができませんが、代わりに自律神経がそれらの働きをコントロールしています。

自律神経が障害されると、心臓や消化器などの内臓の働きも悪くなります。
冷えやほてり、異常発汗、便秘・下痢、立ちくらみ、排尿障害、EDなどさまざまな症状が起こります。これらの症状の内、今回のテーマである「胃無力症」は特に重要な症状です。

なぜかというと、胃無力症は消化に関わる症状であるため、ひとたび生じれば、血糖コントロールを不安定にさせ、場合によっては糖尿病の症状の悪化を招いてしまうからです。

数ある合併症の中でも、今回「胃無力症」を取り上げたのは、そういった理由によります。

胃無力症とは-その2

胃無力症とは、その名の通り、胃の壁の筋肉が緩んで無力化してしまうために、胃の運動や消化作用が鈍くなる状態のことをいいます。通常であれば、胃の中に食べ物がやってくると自律神経が働き、消化運動が始まりますが、糖尿病のために神経障害が引き起こされてしまうと、この反応がうまく行なわれません。

したがって、食べ物を上手に消化できず、胃の中にものがたまった状態が長く続くため、消化不良になってしまうのです。
すると一生懸命消化しようとして、胃酸が通常よりも多く分泌され胃酸過多になりやすくなります。

当然、おなかの張った感じ、食後のむかつき、食欲不振などを感じやすくなります。この状態が続くと、胃炎や潰瘍を起こしやすくなってしまいます。
また、筋力低下に伴い下腹部へ胃が垂れ下がるため胃下垂になりやすくなります。さらに下腹が出ることで体の重心が崩れ、背中が曲がって姿勢が悪くなります。

しかし、糖尿病をもつ方々にとって真に恐ろしいのは、胃の内容物が十分消化されないことではありません。
想像してみてください。
食べたものがいつまでも胃に残っていたらどうでしょうか。腸管に送られないため、食後血糖値は上がりません。しかし、その後の予期しない時に胃の内容物が腸に送り出されてしまいます。そこでようやく血糖値が跳ね上がるのです。つまり、胃無力症は血糖コントロールに直接影響を与えてしまうのです。

これは、特にインスリン注射や経口薬といったインスリンを分泌する作用のある薬を摂取している人にとっては一大事となります。

食後30分に血糖値が上がると想定してインスリン注射を打ったのに、胃無力症のために消化が遅れていたらどうなるでしょう
。上がるはずの血糖値は上がらず、代わりにインスリンによって危険なまでに低下してしまうことさえ考えられます。

また、心理的な問題も絡んできます。本人はしっかりと医師の指導を守り、決められた時間に食事をとり、薬もしっかり服用しているというのに、吸収時間がずれるため血糖値やHbA1cの値が良くならず、医師側から指導を守っていないと疑われるといったケースもあったそうです。

胃潰瘍や胃炎と違い、胃無力症はあくまでも働きが低下する症状です。
炎症や潰瘍が見つかるわけではなく、通常の検査ではまず見つかりません。このように、胃無力症には、糖尿病を悪化させてしまう因子が含まれているのです。

今回のまとめ

★今回のまとめ

胃無力症。聞きなれない言葉ですが、糖尿病をもつ方々にとっては決して無視できない合併症のひとつであります。

なぜならば、直接血糖コントロールに影響を及ぼすから。

次回は、胃無力症の症状をいち早く見抜き、適切な治療を行えるようにするための方法をお伝えします。

・胃無力症は、糖尿病の合併症で神経障害のひとつである

・自律神経が障害されるために、胃のコントロールができなくなる

・適切なタイミングで消化できない、または消化ができても遅い

・血糖値やインスリンのコントロールが難しくなる点が問題

→ 関連項目 危険な病気である脳卒中とは?前兆となる症状で予防できる?

↓ ↓ 下記をクリック ↓ ↓

糖尿病の本当の原因とは?

マンガで読む衝撃の真実とは!?糖尿病の本当の原因

▲ページのトップに戻る

メルマガ情報

くたばれ!糖尿病

糖尿のなぜ?どうして?を徹底解説
糖尿のそこが知りたい!を完全解決

↓メールアドレスを入力する



詳しくはこちら

まぐまぐ公認 殿堂入りメールマガジン くたばれ糖尿病

メルマガのご感想

基礎講座一覧

脳梗塞解説ガイド

なるほど糖尿コラム

「くたばれ!糖尿病」メルマガ登録

糖尿病のなぜ?どうして?を徹底解説。糖尿のそこが知りたい!を完全解決。

↓メールアドレスを入力する