糖尿病と難聴の関係とは?-その1

糖尿病と難聴の関係とは?-その1

このメルマガをお読みの方は、糖尿病に対する意識を高く持ち、日ごろから日進月歩する糖尿病事情にアンテナを高くしていることと思います。

近年、医療関係者を中心にひそやかに(?)ささやかれているのが、「新しい合併症」の存在。
これまで糖尿病の三大合併症と言えば、「神経障害」「腎障害」「網膜症」でしたが、最近注目されているのがなんと「耳の症状」なんです。

研究者によっては、「聴覚障害は、糖尿病の合併症の一つだ」と説明されることもあったり……。糖尿病と聴覚障害の研究は始まったばかり。

今回は、最近の研究結果を中心に医療現場でささやかれていることをお伝えしていきましょう!
どうぞ耳をそばだてるつもりで、最後までお付き合いください。

※「糖尿病と闘う」とは、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて、医師の指導のもとで、糖尿病が悪化しないように真剣に取り組むことを意味します。特定の食品が糖尿病に効くことを示唆するものではありません。※ご紹介する声は、特定の食品が疾病に効くことを示唆するものではありません。あくまでも、読者の皆さまが医師の指導のもとで食事療法・運動療法・薬物療法に取り組まれた結果です。

糖尿病と難聴の関係

これまで、糖尿病と聴覚障害の関係ははっきりしていませんでした。
全世界の研究機関においても、糖尿病と聴覚障害は関連しているという研究発表と、関連はないという研究発表と、真っ二つに分かれていたものです。

しかし近年、アメリカの糖尿病学会で、糖尿病患者はそうでない人に比べて2倍も難聴になりやすいという発表が行われました。
糖尿病患者・非糖尿病患者5000人以上の人を対象にしたこの調査によれば、聴覚障害が認められたのは、糖尿病患者が31.6%に対して、非糖尿病患者は14.5%。おおよそ2倍以上の開きがあったのです。

ちなみにこの研究での糖尿病患者の方は大部分が2型糖尿病だったそうです。
この結果を受けて研究者は、聴覚障害も糖尿病の合併症の一つではないかという見方を示しています。

アメリカの研究だけではなく国内のものもあります。
新潟大学医学部の血液・内分泌・代謝内科学講座の研究チームによって行われた別の調査があります。合計2万194人(うち糖尿病患者7,377人)を取り扱った13件の研究結果を解析した結果、ほぼすべての研究が、糖尿病と聴力障害の高い有病率との関連を示していたと述べています。

それによれば、糖尿病の人々は、そうでない人々より、聴覚障害のリスクが2.15倍高いことがわかったそうです。
ちなみに60歳未満の人々では、60歳以上の人々より、糖尿病と聴力障害の関連は強くなったとのこと。

60歳未満の人々では、糖尿病の方の聴覚障害のリスクは2.61倍に上昇したそうです。
こちらの研究者も同様に、糖尿病と聴覚障害に強い関連があるとし、「糖尿病の人は早い時期から聴覚障害の検診を受けたほうがよい」と述べています。

いずれの研究からも、糖尿病を持つ人は、そうでない人と比べて聴覚障害を発症する割合が2倍以上高くなる可能性があることがお分かりいただけると思います。
研究者たちは、聴覚障害を糖尿病の合併症の一つかもしれないという見方を示しているのですから、放ってはおけませんね。

では、実際に糖尿病を持つ人が聴覚障害を発症するとどのような症状が起こるのでしょうか。具体的にお話ししていきましょう。

糖糖尿病性難聴の症状

聴覚障害のほとんどが、音が聞こえにくくなる「難聴」という症状を呈します。
聴覚障害という言葉よりも、難聴という言葉の方がなじみやすいかもしれませんね。ここでは、糖尿病性難聴と呼ぶことにしましょう。
この難聴には、大きく分けて二種類ありま
す。

「伝音性難聴」と「感音性難聴」です。

「伝音性難聴」というのは、耳とその周囲の機能的な障害をいいます。
音の通り道である耳の穴や、音をキャッチする鼓膜、音を響かせる中耳骨(ちゅうじこつ)などの器官の不具合です。
言うなれば、耳を構成する「部品」の異常です。故障した部品により、それぞれ病名がついていますが、いずれも「部品」を手術することで、回復することが可能です。

対して、「感音性難聴」というのは、やや複雑になります。
言うなれば「部品に異常はないのに、音が聞こえない」という状態です。
内耳から聴神経における神経に問題があることが多いと言われています。
部品ではなく、伝達処理の問題ですので、単純に「音が聞こえない」というだけではなく、「音は聞こえるが何を言っているかわからない」という状態も含みます。

神経伝達というのは、外部から入力された刺激を信号に変えて脳に伝える働きですが、感音性難聴の場合、この刺激が誤って伝わってしまうのです。

本来であれば「○(マル)」として伝わる情報が、神経系統に問題があるために、「×(バツ)」という形で伝わってしまいます。
脳はその情報を処理できず「聞こえて言うけれど何を言っているかわからない」という状態が起こり得ます。「話している相手の声が聞こえない」という人もいれば、「雑音が混じっていて聞き取れない」と表現する人もいますし、「外国語のようで理解できない」という人もいます。

一般に「難聴」といっても、単に聞き取れないのではなく、さまざまな症状があることがお分かりいただけたでしょうか。

上記2つの難聴のうち、糖尿病性難聴で起こりやすいのは後者の「感音性難聴」の方です。
したがって、糖尿病性難聴では内耳や外耳道といった耳の器官が壊れてしまうのではなく、音を伝えるシステムがうまく働かない状況になります。
パソコンにたとえれば、パソコンやキーボード本体の故障ではなく、システムを動かすウィンドウズやファイルといったプログラムやソフトウェアの不具合状況をさすのです。

今回のまとめ

糖尿病と闘う方々にとって、気になる症状である「難聴」。
今回は、その症状と正体にズームアップしてみました。次回はこれらが生じる原因と対策についてさらに鋭く切り込んでいきます。

「最近、聴力が落ちてきたかな」と思う人もそうでない人も次をお見逃しなく!

・糖尿病を持つ人で聴覚障害を合併する人は、健常者の2倍以上

・60代以上よりも60代以下の人の方が合併率が高い

・難聴には「伝音性難聴」と「感音性難聴」の2種類がある

・糖尿病の人の場合、感音性難聴であることが多い

→ 関連項目 糖尿病の怖い症状-糖尿病性神経障害

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