何事にも始まりというものがあります。しかしどうでしょう?
われらを悩ませている糖尿病。その始まりをはっきりと自覚している人は少ないようです。
「後から振り返ってみれば、たしかにあれは症状の始まりだった」とはよく聞く言葉ですが、発症当時はわからないことがほとんど。
早期発見、早期治療が大切と言われるこの病気だからこそ、初期症状のサインを見落とさずにいたいもの。
「もう発症したから、いまさら初期症状なんて関係ないよ」という方もいるかもしれませんね。
でも、それは大きな間違い。初期症状を振り返ることで、改めて自分の現状を把握することができますし、今後の変調のサインにいち早く気づくことにもつながります。
では、糖尿の初期症状を改めて考えてみましょう!
※「糖尿病と闘う」とは、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて、医師の指導のもとで、糖尿病が悪化しないように真剣に取り組むことを意味します。
特定の食品が糖尿病に効くことを示唆するものではありません。
※ご紹介する声は、特定の食品が疾病に効くことを示唆するものではありません。あくまでも、読者の皆さまが医師の指導のもとで食事療法・運動療法・薬物療法に取り組まれた結果です。
初期症状は見落としがち!?
いったい、いつが「糖尿病の始まり」だったのでしょうか。
2人の方に、発症当時の状況を振り返ってもらいました。
Tさん(53歳/男性)
私が発症したのは、42歳のときでした。当時は営業の仕事が忙しく、全国を飛び回っていた時期だったため、付き合いと称して毎日のように外食をし、酒を飲んでいました。
今思えば、完全に自分の健康を過信していました。私の場合健康診断で血糖値の高さを指摘され、その後の精密検査で糖尿病と診断を受けたのですが、振り返ると、その1年半前から『だるさ』がありました。
朝は起きられないし、昼間は立っていられないほど疲労を感じていました。正直『おかしいな?』とは思いましたが、病院行く暇もなかったし、時間が経てば治るかと思い様子を見てい
ました。
それ以前に『自分が病気になるはずがない』と思い込んでいましたから。あのとき受診していたらもっと早く治療を開始できていたはずです。忙しさにかまけて、自分の健康を過信しすぎていました。
Sさん(58歳/女性)
異常なくらい喉が渇いて、毎日ペットボトルの水を3本飲んでいたんですが、当時夏だったので、『今年の夏は暑いのかな』くらいにしか思いませんでした。ばかですね。
秋口になっても、喉の渇きは収まらず、『おかしいな』と思い始めた矢先のこと。友人と食事をしての帰り道、なんとなく足がふらふらしているな、と思ったら次の瞬間には意識が遠くなって、転んでしまいました。高血糖による意識消失です。
悪いことに、転倒の際に右の太ももを強く打ち付けてしまい、複雑骨折となってしまいました。搬送された病院で調べたところ、血糖値は600mg/dl以上あったそうです。
骨折は一応治ったものの、年齢のせいか冬になるとシクシクと痛みます。『もっと早く気づいていれば……。せめて、病院に検査に行っていれば』と悔やむときがあります。
2人とも、「なにか変だな」と感じていながらも、それがまさか糖尿病だとは思わなかったようですね。「だるさ」、「喉の渇き」。
これらは、糖尿病の初期症状ではありますが、いずれも他の病気や単なる体調不良でも見られる症状のため、ついつい見落とされがち。
また、「少し経てば良くなるかも」と様子を見ているうちに悪化してしまうケースも少なくありません。
現在わが国では、はじめて2型糖尿病と診断された人の2人に1人が、すでに慢性合併症の初期症状が見られるとも言われています。
合併症は、糖尿病の発症から平均10年後に現れるわけですから、その間ずっと見つけられず、だいぶ経ってから診断されるケースが増えてきていると思われます。
劇的な発症をする1型糖尿病に比べて、2型糖尿病の初期症状は水面下で進行していくため、「診断時にすでにかなり進行していた」ということになりかねないのです。
また、糖尿病昏睡(とうにょうびょうこんすい)といわれる、高血糖による意識障害は唐突に発症するため、転倒や事故などの二次被害はもちろんのこと、昏睡による意識障害そのものが命に関わることにも。
現在、糖尿病を患っているにも関わらず診断がなされていない、「隠れ糖尿病」の人は、3人に1人いるとも言われています。
それらの人全てに、こういった重大なリスクがあるのです。
代表的な初期症状 その1
・異常な喉の渇き
糖尿病の方に聞くと、初期症状の自覚として「異常なほどの喉の渇き」を訴える方は少なくありません。
読者の方も、きっと身に覚えのある方がおられるでしょう。
喉の渇きが生じる理由は、高血糖にあります。ご存知の通り、血液中に糖が増えると血液がまるで砂糖水のように濃くなります。
糖は尿に出る時、同時に水分も一緒に出すため、尿の量が多くなります。その分、水分量は減っているわけですから、体は脱水状態となってしまいます。
そこで、脳がもっと水分摂取をするように、血糖を薄めるように指令をだすわけです。しかし、水分は飲んだそばから腎臓へ流れていきますので、さらに排尿したくなるわけです。
とにかく喉が渇く→やたらと水を飲んでしまう→頻繁にトイレに行く。これは、初期の糖尿病におけるお決まりのパターン。
この状態に悩まされたという方も少なくないでしょう。水ではなく糖分のあるスポーツドリンクを摂取している場合は、知らぬ間に血糖値が恐ろしいほど跳ね上がっていることも珍しくありません。
・視界がぼやける
初期症状のもう一つのサインは、「視界の歪み」
まるで、度の合わない眼鏡をかけているかのように、視界が歪んだり、ピントが合わせづらかったりといった症状が現れます。
そのため、仕事中パソコンの文字が読みづらかったり、自動車を運転時に歩行者を見落としてしまったり、といったトラブルが起こることもあります。
この原因も、高血糖にあります。24から48時間以上高血糖が続くと、眼のレンズが水分を吸うように膨らみ、厚みが増すことがあります。
これまでとは屈折率が異なるため、ピントが合わせづらくなってしまうのです。多くの場合は血糖コントロールをよくすれば数日で改善しますが、レンズが完全に元に戻るには6週間以上かかるそうなので、高血糖が落ち着いてもその間は十分に注意をしなくてはいけません。
今回のまとめ
いかがでしたか?
発症当時のことを思い出した方もいたかもしれませんし、今の自分がまさにこれだとドキッとした方もおられるかもしれません。
さらに糖尿の初期症状には何があるか、また次の回でも詳しく取りあげていきます。
・糖尿病であるにも関わらず診断されていない人が3人に1人いる
・糖尿病とはじめて診断されたときに、すでに合併症を有していることも少なくない
・喉の渇き、視界の変化などの初期症状があるが気づきにくい
・初期症状に気づかないために、知らぬ間に進行している可能性がある
→ 関連項目 糖尿病─脳梗塞と心筋梗塞-その1
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