糖尿病の急性合併症について

糖尿病の急性合併症について

今回のテーマは、「糖尿病の急性合併症について」です。

「えーっ、また合併症について?」「もう、十分知っているよ」
という方もいるかもしれませんね。

でも今回お話するのは、「急性」合併症です。これまでお話して
きた、糖尿病性神経障害や糖尿病性腎症といったいわゆる3大合併
症とは異なる合併症です。

しかも、慢性疾患である糖尿病にもかかわらず、これらの合併症
は「急性」というだけあり、その進行は極めて早く、下手をすれ
ば発症から数時間後には対応次第で命の危険にさらされることさ
えあります。その時の対応が生死を分けるといっても過言ではな
いのです。

今日は、ちょっとだけコワい「急性合併症」について。

一緒に勉強していきましょう!

糖尿病ケトアシドーシス(DKA)について

糖尿病の急性合併症でもっとも重大なのは、「糖尿病性ケトアシ
ドーシス(DKA)」です。

初めての方には耳慣れない言葉かもしれませんね。糖尿病ケトア
シドーシスとは、1型糖尿病でインスリンを打っていた人が何ら
かの事情で打てなくなってしまった場合や、2型糖尿病の人でジュー
スを大量に飲んでしまった場合など、糖尿病の人が何らかのきっ
かけで一時的に高血糖の状態になったときに生じる合併症です。

さて、このときの高血糖とはどれくらいでしょうか。基本的には、
300mg/dl以上であり、状態によっては500から1000mg/dlになって
いることもあります。非常に高い数値ですね。

このような極度の高血糖にさらされたとき、体の中は緊急状態に
なっています。高血糖であるということは、血液中のブドウ糖を
うまく代謝できない状態にあるということですね。

詳しく説明していきましょう。

1型の場合であれば、インスリン不足のために血液中の血糖をエネ
ルギーとして代謝できなくなってしまっており、糖が血液中にだ
ぶついている状態です。2型の場合も同様で、インスリンの効きが
悪かったり抵抗があったりするために、血液中の糖を十分に代謝
できない状態なのです。

暖炉に燃やすべき薪はたくさんあるというのに、火を付けられな
い状態とでもいったらいいでしょうか。そこにエネルギー源はあ
るのにインスリンというマッチがないために使えない状態なので、
当然ながら体はエネルギー不足のために飢餓に陥ります。

すると何が起こるでしょうか?

体はなんとかエネルギーを作りだそうとして、糖質の代わりに筋
肉など体内に蓄えたタンパク質を燃やそうとするのです。その際、
タンパク質を燃やすための燃料が体脂肪です。

要は、体に蓄えた脂肪を燃料としてタンパク質を燃やし、エネル
ギーを得るわけです。そのときに脂肪の燃えカスから「ケトン体」
という物質が生まれます。ご想像のとおり、ケトン体は糖尿病の
人だけでなく、一般の人であってもダイエットや断食などで糖質
を故意に控えると発生します。この時点では脂肪が燃焼されてい
くだけで、とくに困ったことはありません。

しかし、問題はこのケトン体。これは酸性の物質なのです。した
がって過剰に増えてしまうと血液が酸性になってしまいます。こ
れが、「ケトアシドーシス」という状態です。

ケトアシドーシスになったら一大事です。口渇や脱水といった高
血糖の症状はもとより、悪心・嘔吐・腹痛などの消化器の症状が
起こります。また高血糖成分が尿の中に大量に排泄されるために、
浸透圧の差によって水分だけでなく体液や電解質までもが尿とし
て失われ、より脱水がすすみます。

そうなると、完全に体液のバランスが崩れてしまいます。体内の
血液量も減少するため、脈が早くなったり血圧が低下したりといっ
た全身症状もみられ、進行すると昏睡を生じ、場合によっては死
に至る怖い症状となってしまうのです。

ちなみに糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病の妊婦さんに起きる
もっとも重篤な合併症としても知られています。糖尿病合併妊娠
の1.2%に発症すると報告されており、早期診断され早期に適切な
治療が施されないと、現在でも死亡率が約10%におよぶといわれ
ています。

妊婦さんに発症すると、胎児死亡は、以前の報告では30〜90%、
最近の報告でも22〜35%の頻度で起きるため注意が必要といわれ
ています。妊娠中はちょっとした体液バランスの大きな問題を引
き起こすため、糖尿病性ケトアシドーシスは重要視されています。

高浸透圧高血糖症候群

糖尿病性ケトアシドーシスのほかに、もう一つ覚えておかなくて
はいけない急性症状があります。「高浸透圧高血糖症候群」です。

うーん、なんとも長い名前ですね・・・(汗)

発症する人数は、糖尿病性ケトアシドーシスの約1/6程度で、
約1万人に1人程度とされており、比較的多くはありません。ただ
しひとたび発症すると、死亡率は30から50%。早期発見や適切な
治療がなされた場合でも約20%と報告されており、未だに高率に
死亡する可能性があるキケンな急性症状なのです。

この高浸透圧高血糖症候群とはどのような状態なのでしょうか。

先ほどお話した、糖尿病性ケトアシドーシスと同じく糖尿病が原
因の高血糖による急性代謝失調異常です。違いは、糖尿病性ケト
アシドーシスが1型糖尿病患者さんに多く生じるのに対して、こち
らは2型糖尿病患者さんに多く生じるという点にあります。多くの
場合、感染症、脳血管障害、手術、高カロリー輸液、利尿薬やス
テロイド薬の投与といった、外的な要因によって体内のインスリ
ン作用不足が起こったときに生じやすいです。

2型糖尿病の方がメインであり、ある程度のインスリン分泌機能
は残されているため、糖尿病性ケトアシドーシスと異なり、これ
らの原因が起きてから数日の期間をおいて発症するのも特徴です。

300mg/dl以上の高血糖状態が比較的ゆるく長く続くことで、糖の
含まれた尿が多量に排泄されることになります。そのため体内の
水分が奪われることで引き起こされる高度な脱水が主症状です
が、糖尿病性ケトアシドーシスと異なり、急激に変化する強度の
アシドーシス(体の酸性化)はあまりみられません。

さて、ちょっと強引ではありますが、最後にこの2つの差をまとめ
ておきましょう。

糖尿病性ケトアシドーシスは、

1、1型糖尿病の人に生じやすい。

2、ケトン体が溜まるため体がケトアシドーシス(酸性化)する。

3、発症から数時間程度と進行が早い。

という特徴があります。

一方、高浸透圧高血糖症候群は、

1、2型糖尿病の人に生じやすい。

2、利尿による高度脱水が主な症状。

3、発症から進行までが緩やか。

ということになります。

今回のまとめ

糖尿病の急性合併症である、

「糖尿病性ケトアシドーシス」と「高浸透圧高血糖症候群」

これらの共通点は、「ある原因によって突如引き起こされる」点
にあります。インスリンポンプが壊れてしまったり、他の病気で
薬剤を投与されたために体内のインスリンの効きが悪くなったり
等、なんらかのきっかけによって一気に引き起こされるのがポイ
ントです。このきっかけを「シックデイ」と呼ぶこともあります。

このシックデイを乗り越え急性症状を起こさないための工夫を次
回にお届けしますね。

・糖尿病の急性合併症は、場合によっては命にかかわる

・主な症状に、糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候
群がある

・いずれも、体内で300mg/dlから1000mg/dlを超える高血糖となる

・なんらかのきっかけによって突然引き起こされる

→ 関連項目 どうして体がだるいの?

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