呼吸や代謝、性といった私たちの体のコントロールをつかさどるホルモンは、絶妙なバランスで成り立って
います。それゆえに、糖尿病の治療にも大きな影響を与えます。
女性の場合は、妊娠や更年期といった時期にホルモンバランスが乱れやすく、結果、血糖コントロールが難しくなるのでしたね。
今回は、糖尿病とホルモンバランスについてさらなる問題についてクローズアップしていきましょう。
糖尿病とホルモンバランス
ホルモンバランスの乱れは自律神経と深い関係があります。そして、自律神経が乱れると血糖コントロールにも悪影響がもたらされます。
自律神経をコントロールしているのは脳の中でも「視床下部」というところです。この視床下部は自律神経だけでなく、ホルモンの分泌もコントロールしています。自律神経とホルモンバランスの両方が視床下部でコントロールされているために、その双方が影響しあっているというわけです。
自律神経失調症という言葉があるように、呼吸や体温調節などをつかさどる自律神経系は、ストレスなどの環境要因によって容易に乱れることがわかっています。
自律神経系の乱れは、ホルモンバランスにどのような影響を与えているのでしょうか?
人の体は強いストレスを受けると、不快な刺激が視床下部へと真っ先に伝わります。その際、視床下部は自律神経に対して、交感神経を働かせてストレスに対抗せよ、という指令を出すのです。ストレス状況に対応しようとして交感神経が亢進され、手に汗をかいたり、やる気が出たりするのがこの段階ですね。
さらにストレスが続くと、視床下部は信号を出し続けてホルモンの分泌も促進されます。アドレナリンや副腎皮質ステロイドホルモン、成長ホルモンなどの分泌が増えます。これらのホルモンのうちアドレナリンは、単独でも作用しますが、交感神経の働きをますます促進させるホルモンでもあります。つまり、アドレナリンというホルモン分泌が増えることで、交感神経が優位になります。こうして、視床下部を司令塔とした自律神経系とホルモン系の協働作業により、ストレスに対抗することができる体の状態がつくられるわけです。
ストレスに対抗できるのはよいことなのですが、困ったことに、アドレナリンは心拍数や血糖値などを上昇させるだけでなく、空腹を感じにくくさせる作用があります。これは、体をストレスに対応する戦闘状態へ順応させるために血糖値をあげ、空腹状態を感じにくくさせるための作用なのですが、糖尿病の人にとっては困った状態となってしまいます。
それだけではありません。アドレナリンとは逆に、ストレスがかかると分泌が抑えられるホルモンがあります。
その代表格がインスリンです。インスリン分泌が抑えられると、当然ながら高血糖になりやすくなります。
かくして、ストレス状態が過剰に続くと自律神経が過敏となり、またホルモンバランスも乱れてしまい、糖尿病コントロールが難しくなるのです。
このように、ストレスがかかるとまず脳の視床下部が反応し、同時に自律神経系とホルモン系が作用しあい、ストレス状況に対応しようとします。その過程で高血糖になりやすくなるというわけです。ホルモンバランスと自律神経系の絶妙な関係がお分かりいただけたと思います。
糖尿病の人がホルモンバランスを整える方法
では、ホルモンバランスをできるだけ整えて血糖コントロールを容易にし、病状を悪化させないためには、どうしたらいいのでしょうか。
いくつかのヒントをまとめてみました。
■ホルモンバランスを整えるツボ
・合谷(ごうこく)
手の親指と人差し指の間で2センチほど中に入ったところにあります。万能つぼともいわれており、女性ホルモンの乱れに特に効果的といわれています。
・神道(しんどう)
首の後ろの付け根にある骨から背骨5本分くらい下にあるツボです。ホルモンバランスを全般的に整えます。
・神門(しんもん)
手首の関節で小指の真下にあるツボです。ストレスに対して即効性があります。
押し方:
これらのツボを、親指または人差し指と中指の二本の指の腹で抑え、上からグッグッと押します。心地よい痛みを感じるまで続けてください。朝晩一日二回、リラックスした状態で行いましょう。
■ホルモンバランスを整える食事
・アボカド
アボカドにはマグネシウム、ビタミンE、ビタミンB、葉酸、食物繊維、カリウムといったホルモンを維持するのに有効な成分が豊富に含まれています。特にビタミンEは、細胞膜を安定させてホルモン分泌のバランスを整える作用があります。またビタミンBは女性ホルモンの代謝を促進しバランスを整えてくれます。アボカドを選ぶ際は、真っ黒でつやのいいものにしましょう。
・良質なタンパク質
鶏肉や脂質の高い魚、大豆など良質のタンパク質源はホルモンバランスを整える大切な食品群です。特に、サーモンやイワシ、サバなどの脂がのった魚はホルモンの原材料になります。また、大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをするため、ホルモンバランスの乱れをサポートするのに効果的といわれています。
・アブラナ科の野菜
ブロッコリーやキャベツ、もやし、カリフラワー、チンゲンサイなどのアブラナ科野菜は、女性ホルモンの過剰分泌を防ぐ効果があるといわれています。
・バター
バターにはホルモンの構築に必要な脂溶性のビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK2が豊富に含まれています。また、エネルギーに変換されやすい短鎖、中鎖脂肪酸は免疫機能を強化し、優れた抗菌効果があります。
・卵黄
卵黄にはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB群、鉄、カルシウム、カリウム、リン、コリンが豊富に含まれています。これらは生殖器系のホルモンバランスを適切に保ちます。また、コリンとヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分として知られています。
幸いなことにこれらの食材は、糖質がさほど高くなく、糖尿病の方でも安心して摂取できるものばかりです。
特に良質なたんぱく質は、ホルモンをつくるだけでなく、空腹感を解消し、筋肉をつくって代謝をアップさせるためにも有効です。食事療法の一環として、積極的に摂るようにしたいものですね。
今回のまとめ
ホルモンバランスと自律神経系は、視床下部を介して密接に結びついています。日ごろからツボ押しやバランスの良い食事をとるなどして、ホルモンバランスの安定に気を付けましょう。
・自律神経とホルモンバランスは、視床下部を介して連動している
・ストレスなどにより刺激を受けると、ホルモンバランスが乱れやすくなる
・自律神経が高まるとホルモンバランスも乱れ、血糖値が下がりにくくなる
・こまめなツボ押しがホルモンバランスの安定に有効である
・食事はバランスよく、タンパク質や卵黄なども摂るようにする
→ 関連項目 糖尿病の方のメンタルケア-その①
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