代表的な初期症状
・脱力感
前号でお話した、「異常な喉の渇き」や「視界のぼやけ」のほかにも、糖尿病の初期症状と言われるものがあります。
その一つが、「脱力感」。
なんとも言えないだるさを感じたり、せっかくの休日だというのに起き上がる気力がなく寝続けてしまったり、といったように、「疲労」として認識されやすいため、初期症状として気づく人は
少ないようです。
多くの場合、「しっかり休めば治るだろう」と思い体を休めるのですが、どれだけ体を休めてもあまり改善しないのが特徴です。
糖尿病の初期症状による脱力感は、血糖の変動によって現れるものがほとんどです。高血糖とは、血液中にエネルギーの固まりであるブドウ糖が沢山浮かんでいる状態。
それらのエネルギーを体に取り込み使うことができません。なので、体は常にガス欠のような状態。目の前にガソリンがたっぷりあるというのにうまく使えない、という状況なのです。
・空腹感
上記の脱力感と並んで、特徴的な初期症状に、「空腹感」があげられます。
さっき食事したというのにまたお腹が空いている、いくら食べてもまた食べたくなってしまう、というように、常にお腹が空いている状態です。
実際に食べる量が多くなれば、カロリー過多となり体重が増えるのが普通ですが、糖尿病による初期症状の場合は、なぜか体重が減少することが多いものです。
糖尿病のために高血糖の状態が続くと、血液中にエネルギーの原料となる糖が大量に浮かぶ状態になる、と先ほどお話しましたが、これらの糖は最終的には尿糖として尿に流れ込み、排出されてしまいます。
車で言えばガソリン垂れ流し状態ですね。そのため、いくら食べても体に蓄積されることがなく、体重が減少してしまうのです。
この状態が続くと、体はすでに付いている脂肪や筋肉を分解して、エネルギーを作り出すようになります。結果、痩せてしまうわけです。
糖尿病には体重が増えるイメージがありますが、高血糖状態が続くと、空腹感が続くのに体重が減ってしまうということになります。いわゆる、「いくら食べても痩せてしまう」という摩訶不思議な症状です。
・汗が増える
糖尿病の初期症状の一つ、「発汗」。運動したときはもちろん、ちょっと歩いただけ、体を少し動かしただけにもかかわらず、脇や額からとめどなく汗が吹き出してしまいます。
それだけではなく、単に食事しているだけ、着替えをしているだけでもびっしょりと汗をかくことがあります。寝汗をかくという人も多いようです。
原因は、糖尿病神経障害。神経障害といえば、糖尿病の3大合併症の一つ。「えっ、初期症状なのに、もう合併症の症状が?」と驚く方もいるかもしれませんね。
でも、残念ながらその通り。初期症状にして、すでに症状が進行している方が多いのが現実なのです。糖尿病性神経障害になると、自律神経が乱れやすくなり、普段ならば汗をかかない状況にもかかわらずたっぷり汗をかいてしまうということが起こります。
顔や胸、腕などだけでなく、頭から汗をかくというのも特徴の一つです。
初期症状に気づくコツ
このように、2型糖尿病における初期症状はわかりにくいため、早期発見はかなり難しいものです。そんな中でも、自分の体調の変化に気づくにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは、いち早く自分の体調の異変に気づき、早期治療を行うことができた方の経験談をお話します。
Wさん(43歳/女性)
「私は、母が糖尿病だったこともあり、この病気に関する知識はかなりありました。また、遺伝する部分があるかもしれないと考え、自分も日頃から気をつけるようにしていました。
勤務している会社で、年に1回健康診断があるのですが、その際の血糖値チェックはもちろん、体重の変動にも気をつけていました。
当然食事も気をつけていたつもりなんですが、ある冬の日、やたらと尿の回数が多くなっていることに気づきました。ちょうど忘年会シーズンだったので飲み過ぎのせいかとも思ったので
すが、思い込みはいけないと考えなおし、数日間尿の回数をチェックしてみました。
12から14回。明らかに多いです。喉の渇きはさほどなかったのですが、温かいお茶をよく飲んでいました。自分では、『寒いから』と思っていたのですが実際には体が水分を欲していたのでしょう。
念のため母の持っていた血糖値測定器を借りて測ってみたところ、250mg/dl。ものすごく高いわけではないですが、念のため受診しました。医者には『こんなに早く見つかるケースは少ない』と言われましたよ。」
Wさんの場合、身近に糖尿病の人がいたということもあり症状に詳しかったことが早期発見につながりました。
しかし、それだけではなくWさん自身が、自分の体調を過信することなく、冷静に自分の状態をチェックしていました。
そして「もしかしたら」を考え、早めの受診を心がけていました。その姿勢が初期症状の早期発見につながったのではないでしょうか。
今回のまとめ
日常の生活の中で、いつも体調に気を配り、「もしかしたら……」を第一に考えこまめに受診を心がける、というのは口で言うのはたやすいですが、行うのはなかなか難しいもの。
めまぐるしく変わる日々の生活、そこまで自分に時間をかけられないという人も多いでしょう。でもそんなとき、持って欲しいのが、「待てよ」という一言。
「きっと疲れ過ぎだろう」、「少し休めば治るだろう」その思い込みを捨て、ほんの一瞬、「待てよ」と踏みとどまる。それができれば、今よりも自分の体調を把握しやすくなるはずです。
過信は禁物。微妙な変化を感じ取るアンテナを育てたいものです。
→ 関連項目 どうして体がだるいの?
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