糖尿病-減塩のススメ!-その1

糖尿病-減塩のススメ!-その1

「糖尿病食は味がしない」とよく言われていますよね。
だから糖尿病食を食べたがる人が少ないのかもしれません。

でも、なぜ糖尿病食は味が薄いのでしょうか?

それは、甘さのみならず塩分も抑えているから。「減らすのは糖質だけでいいだろう、なんで塩まで減らすんだ」と思う方も多いかもしれませんね。

糖尿病の食事療法というと糖質制限に目が行きがちですが、じつは塩分制限も大切なファクター。食事療法を成功させるうえで塩分制限というのは欠かせない事柄なのです。

「やれやれ、糖質だけでなくて塩分もだめなのかい」とお気を落とさずに。
長い一生、食事を楽しく味わうためには「塩分」についての知識は欠かせません。

※「糖尿病と闘う」とは、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて、医師の指導のもとで、糖尿病が悪化しないように真剣に取り組むことを意味します。特定の食品が糖尿病に効くことを示唆するものではありません。※ご紹介する声は、特定の食品が疾病に効くことを示唆するものではありません。あくまでも、読者の皆さまが医師の指導のもとで食事療法・運動療法・薬物療法に取り組まれた結果です。

糖尿病と塩分の関係

2型糖尿病患者を調べたある調査によると、塩分過多の食事は心筋梗塞や脳卒中などを高めやすいことがわかりました。
調査によってどれくらい発症しやすいかという割合は異なっていますが、もっとも有力な研究によれば、糖尿病患者が塩分を多く摂りすぎてしまった場合、脳卒中、心筋梗塞などを発症してしまう可能性は、そうではない人の約2倍となってしまうそうです。

医学界では、糖尿病と塩分は非常に関係が深く、糖分を少なくしても、塩分を多くしてしまえば糖尿病が悪化してしまう確率が高くなると言われています。

それ以外にも、糖尿病患者が塩分過多の食生活を続けていることで、糖尿病の進行や合併症の発病を高めてしまう可能性があるという研究はかなりあります。

糖尿病治療では糖質制限にばかり目が行きがちですが、ガイドラインによれば、糖尿病患者の場合、塩分も1日6gに抑えることが推奨されています。
一般の人の摂取量が1日10gであることを考えれば、糖尿病患者がその半分強の塩分摂取に留めるというのは、比較的厳しい制限であるように思えますが、それだけ重要であるということです。

では、なぜ塩分過多がいけないのでしょうか?

それは、塩分の取りすぎによって糖尿病の合併症である糖尿病網膜症、糖尿病性腎症などが引き起こされやすくなり、動脈硬化が加速度的に進んでしまうことがあるからです。

塩分過多は高血圧を招きますが、糖尿病の人が高血圧を起こす割合は、そうでない人に比べて約2倍高くなるという調査結果もあります。

血糖値の異常やインスリン抵抗性のために動脈硬化を起こす可能性も高まるため、糖尿病の人が高血圧になっていると心血管疾患を起こすリスクが倍増します。

日本高血圧学会のガイドラインによれば、高血圧患者は、脳卒中や心臓病の危険度から、低リスク、中リスク、高リスクの三つに分類されています。

低リスクは血圧が高いだけで脳卒中や心臓病の危険因子がない人。
中リスクは糖尿病以外の危険因子がある人。
高リスクは糖尿病、高血圧による臓器障害、心血管病変のいずれかがある人となっています。

つまり、糖尿病と高血圧を併発した状態は、脳卒中や心臓病の高リスク状態であるとみなされるわけです。

塩分と糖尿病の人の血管 その1

なぜ、糖尿病の人は塩分を取りすぎてはいけないのでしょうか?

その答えは「血管」にありました。
糖尿病は最終的には全身の血管にダメージを与えることで、各種の全身合併症を併発させてしまう病気です。
「糖尿病は血管の病気」と言われていることを知っている方も多いでしょう。

食塩中の主な成分であるナトリウムは、交感神経を活発にさせる働きがあります。交感神経というのは、運動や動作を活発にさせるための神経です。
一説によれば、北海道やロシアといった寒い地域の人ほど塩分を多く摂るのは、冬の寒さに耐えるために交感神経を活発にさせる必要があるからともいわれています。

しかしながら、交感神経が活発になると血管が収縮されます。そうすると、狭くなった血管に圧がかかりやすくなります。
糖尿病の人は、ただでさえ高血糖によって血液がドロドロになりやすく、血管が詰まりやすい状態にあります。そこに血管が収縮されるとどうなるでしょうか。
圧が高まり高血圧症になりやすくなります。ダメージを受け続けると、動脈硬化を招きやすくなります。

食塩が糖尿病の人のもろい血管にダメージを与える理由はほかにもあります。
それは、塩辛いものを食べた際の私たちの体の反応に由来します。体は食塩を摂りすぎると、塩分濃度をうすめようとして、水分を多く摂取するようになります。

塩辛いものを食べると喉が渇くのはこのためです。飲水が進むと体内の水分量が増え、結果血液が増えます。そのために血管が押し広げられてしまいます。
塩分を多量に取ると、交感神経の働きによって血管が縮められてしまうのにもかかわらず、その中を流れる血液量が増えてしまうのですから、血管の壁に大きな負担をかけてしまいますね。その結果、血圧が上がってしまうというわけです。

つまりは、糖尿病の人は血管が脆いために、塩分を取ることで、ふつうの人よりも血管のダメージが進行しやすくなってしまうというわけです。

また塩分過多による高血圧が進むと、目の網膜に影響があらわれ、糖尿病性網膜症と同じような悪影響を及ぼすことが知られています。
動脈硬化による心臓病、脳卒中も同様です。その点において、糖尿病と高血圧は実によく似ているのです。

また糖尿病と高血圧は、その原因も似ています。過食や運動不足、それによる肥満、インスリン抵抗性、精神的ストレスなど共通する要素が多く、治療の基本となる食事療法・運動療法もほぼ同じになります。
つまり、高血圧と糖尿病は病名こそ違っていても、原因と結果と対策がよく似ているということですね。

このような理由から、糖尿病食と減塩食は全く別のものではなく、似たような食事になっていると思われます。糖尿病と高血圧は切り離せるものではなく、そのカギを握るのが「塩分」ということになります。
高血圧の人は減塩とともに摂取カロリーを、糖尿病の人は摂取カロリーとともに減塩を考えていく必要があるということを、おわかりいただけることでしょう。

今回のまとめ

糖尿病の人が塩分を取り過ぎてはいけない理由のひとつは、血管に対する悪影響にありました。
糖尿病の人はふつうの人よりも血管のダメージを大きく受けやすいために、塩分過多による高血圧が進行しやすく、三大合併症をひきおこしやすくなるというわけです。

・塩分は、交感神経を活発にし血管を収縮させる働きがある

・塩分過多になると喉が渇き、飲水によって循環血液量が増える

・糖尿病の人の推奨1日塩分量は、6g

・糖尿病と高血圧は、血管のダメージという点で似ている

→ 関連項目 糖尿と血液の深い関係

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