ゆっくり食べて糖尿改善

ゆっくり食べて糖尿改善

食事のスピードは人により異なり、5分で完食する方もいれば、30分かけても食べ終わらない方もいます。また、仕事などで忙しく、十分に咀嚼せず飲み込むため食事のスピードが速いという方もいるのではないでしょうか。
早食いによって体が感じるストレスは、非常に大きいものです。早食いが原因で太りやすくなる他、負担が増大することで「糖尿病」につながるおそれもあるため注意が必要です。
そこで今回は、早食いと体の健康の関係性についてご紹介します。

早食いをすることで肥満につながる

「早食いをすると太りやすくなる」という話を聞いたことがある方も多いはず。これには脳の満腹中枢が関係しています。満腹中枢とは、脳の視床下部にある器官のひとつで、摂取した食べ物に反応して体に満腹感を知らせるという働きがあります。
食べ物を摂取すると血液中のブドウ糖(血糖)の量が増加し、血糖値が上昇します。これを感知し、「これ以上のエネルギーは必要ない」と体に伝えるのが満腹中枢です。もしも満腹中枢が正常に機能しなければ、どれだけ食べても体が満腹感を得られることはなく、いつまでも食べ続けることになります。
そんな満腹中枢ですが、血糖値の上昇を感知するまでには約15分かかるといわれています。そのため、早食いの方は体が満腹を感じる前に食べる量が多くなりがちです。これにより、つい食べすぎてしまい、やがて肥満へとつながってしまうのです。
これを改善するためには、最低でも15分以上かけて食事をすることが大切です。ゆっくりと咀嚼する他、家族や友人と会話しながら食事を楽しむことで、早食いを防止することができます。

胃が弱い方のほとんどは早食い?

早食いをすることで起こり得る問題には、胃への負担もあげられます。咀嚼は、食べ物を消化しやすくする他、胃に対し「今から食べ物を送る」というサインを出す役割も担っています。このサインを受けた胃は消化の準備を始め、ぜん動運動により食べ物と胃酸を混ぜ合わせて消化し、これを小腸へ送り出しているのです。
しかし早食いをすることで、胃が準備を終える前に食べ物が運ばれてくるため、胃に大きな負担がかかります。過度な負担がかかった胃は運動機能が低下し、消化活動が行われなくなり、胃もたれや胃痛を引き起こすおそれがあるのです。
さらに、咀嚼の回数が少ないと食べ物と一緒に空気を飲み込んでしまうことになります。食後、「お腹が張って苦しい」と感じたことがある方もいるのではないでしょうか。この原因として、空気で胃が膨らみ、内圧が上がっていることが考えられます。
これらを改善するためには、ひと口につき30回を目安に、ゆっくり噛んで食べるよう心掛けることが大切です。どうしても早食いを抑えることが難しいという場合は、ひと口ごとに箸を置き、飲み込んでから箸を持つようにするとよいでしょう。また、歯ごたえのあるものを意識的に食べるのもおすすめです。

早食いが糖尿病を引き起こすおそれがある

肥満や胃への負担はもちろんですが、特に注意しておきたいのが「糖尿病」です。早食いは糖尿病の原因にもなり得ます。前述どおり、食べ物を摂取すると血液中でブドウ糖の量が増加し、これにより血糖値が上昇します。すると、血糖値を抑制しようと、膵臓から「インスリン」が分泌されます。インスリンとは、各臓器がブドウ糖をエネルギー源として利用できるようサポートを行うホルモンのこと。さらに、タンパク質を合成したり、細胞の増殖を促したりといった役割も担っています。
早食いをすると、血糖値が急上昇します。すると、膵臓は短時間で必要なインスリンを分泌しなくてはならなくなります。これにより膵臓に過度の負担がかかり、インスリンの分泌量が減少したり、分泌されても十分に機能しなくなったりなどの問題が発生し、やがて血糖値を抑制できなくなるのです。この、血糖値を抑制できず、常に高血糖が続く状態を糖尿病といいます。糖尿病が続くと、腎症や網膜症、神経障害などの合併症が引き起こされやすくなります。
血糖値を下げるためには、インスリンの存在が必要不可欠です。体内に存在するホルモンの中でも、インスリンは血糖値を下げることができる唯一のホルモンだからです。しかし、一度弱ってしまった膵臓を元に戻すのは非常に困難とされており、この場合には自身でインスリン注射を行わなくてはなりません。毎食後に自身でインスリン注射を打つとなれば、それだけ費用や手間がかかることになります。
日本人をはじめとするアジア人は、欧米人と比較してインスリンの分泌量が少ないといわれています。したがって、糖尿病を防ぐためには、早食いに注意し、膵臓への負担を軽減できるよう努めることが大切なのです。

体に負担の少ない食べ物とは?

膵臓への負担を軽減するためには、早食いをしないよう意識する他、バランスのよい食生活を心掛けることも重要です。ポイントは、必要以上のカロリーを摂取しないことです。白米やじゃがいもなどの炭水化物、卵や魚介などのタンパク質、緑黄色野菜や海藻などのビタミン・ミネラルといった必要な栄養素を、決められたカロリーの範囲内で摂取するよう意識しましょう。また、野菜や海藻、玄米、きのこ類などから食物繊維を積極的に摂り、反対にカロリーが高めのマーガリンやドレッシング、揚げ物などは避けることが望ましいといえます。
また、胃への負担を軽減するためには消化のよい大豆や卵などを摂取することもおすすめです。一般的に、消化に時間がかかるといわれている肉は、脂肪の少ない鶏肉のささみや牛・豚肉のヒレなどを選ぶとよいでしょう。こちらも揚げ物は避け、煮る、蒸す、ゆでるといった調理方法を選択することで、体への負担を軽減することができます。

糖尿病の改善に有効な「食事療法」とは?

糖尿病の治療法に「食事療法」があるように、食事と健康は切っても切れないものです。食生活の見直し・改善を行うことで、糖尿病を改善に導くことができます。
まず基本となるのが、一日3食をしっかり摂ることです。一日3食を毎日同じ時間に、できるだけ同じ量を摂るよう心掛けることで、血糖値を正常値に戻しやすくなります。「血糖値の上昇を防ぐため、食べないようにしたほうがよいのでは」と考える方もいますが、そうなると一度に摂取する量が増え、かえって血糖値を急上昇させるおそれがあります。また、体が「今のうちに栄養を摂取しよう」と活発に働き、栄養を吸収するため、脂肪がつきやすくなります。健康のためには、一日3食、栄養バランスのよい食事を摂ることが不可欠なのです。
また、自身の年齢や性別、体型などに応じた適正なエネルギー量を意識することも重要です。いわゆるカロリーのことで、一般的には成人男性で1,400~1,800kcal、成人女性で1,200~1,600kcal程度が適正なエネルギー量の目安といわれています。ただ、標準体重や日々の活動量により差があるため、自身のデータを元に数値を算出した上で、適正なエネルギー量の食事を摂ることが大切です。
なお、適正なエネルギー量は血糖値や合併症の有無によっても異なるため、算出する場合は必ず医師の指示に従うようにしましょう。

日々の食生活が健康な体をつくる

食事と健康は、非常に結びつきの深いものです。何となく頭で分かってはいても、「具体的にどんな関係があるのか分からない」「自分だけは大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。また、「偏食に気をつけていれば問題ない」と簡単に考えている方もいるかもしれません。しかし前述どおり、食べ方ひとつで健康に悪影響を及ぼすおそれも十分にあるのです。
健康な体をキープするためには、体が発するサインに気づくことが大切です。胃に異変を感じたり、血糖値が高くなり始めたりした場合は、日ごろの食生活を見直してみることをおすすめします。

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