心不全とは、何らかの理由によって全身へ血液を送り出す機能が低下してしまうことです。そして、糖尿病の人はそうではない人に比べて、何倍も心不全にかかりやすく、その理由には、高血糖による心臓毛細血管循環不全とDPP4という物質が関与しているからと考えられているからでしたね。
心不全のリスクが増す理由 - その2
糖尿病が心不全を招きやすいもう一つの理由に、腎臓にあります。
「えっ?どうして腎臓と心臓が関係あるの」と思った方もいるかもしれませんね。
ご存じのように腎臓は尿を作る器官です。身体の中でいらなくなった老廃物を含む血液をろ過して、尿として体外排出するとともに、きれいになった血液を体内に戻すという働きをしています。
この血液をろ過しているのが腎臓の糸球体と呼ばれるところです。
これはちょうど浄水器のような役割を果たしています。水道の蛇口に取り付けるタイプの浄水器をお使いの方ならわかると思いますが、水を浄水するためのカートリッジという部分には、そうめんサイズの糸がぎっしり詰まっています。
この糸の中に水を通して、不要な物質を絡めて取り除くのが浄水器のシステムです。腎臓における糸球体もちょうど同じような働きをして、血液から尿をこし取っています。
ただし、この糸球体は毛細血管の塊でできているため、高血糖が長期間続くと毛細血管が糖で詰まってしまい、ろ過機構が破綻してしまいます。
この状態が三大合併症の一つ、糖尿病性腎症です。
血液中にはタンパク質も含まれています。糸球体はこれらをしっかりこし取り体内に戻しますが、腎症に陥った状況下では、大事なタンパク質などが尿として身体の外に漏れ出てしまうのです。
これがタンパク尿ですね。
タンパク尿が多量になりますと当然ながら血液中のタンパク濃度が下がります。血液中からタンパク質が失われると、浸透圧の関係で、血管内に水分を保つ力が低下してしまい、血管から全身へ水分が流れやすくなります。また、腎機能低下によって体中の水分をうまく排泄できないため、結果的に体は常に水分をため込んだ状態となりむくみが引き起こされてしまいます。そして、体内の水分量が過剰となり高血圧となります。
体内の水分過多状態と高血糖。この二つは、心臓に大きく負担をかけます。そのため心不全を招いてしまうのです。糖尿病は、腎障害という合併症を引き起こしやすく、さらにそこから心不全をも引き起こします。一連の流れが「最悪の連鎖」になっていることを覚えておいてくださいね。
心不全にならないための心得
・HbA1cを8.0%以下でキープする
国立循環器センターの調査によれば、糖尿病と心不全の関係は、ある指標を過ぎると急激に悪化するとのことでした。
その指標とは、おなじみのHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)。
この値が8.0%を超えて悪くなっている糖尿病患者の場合、心不全によって入院する割合も増えていたとのことです。
ちなみに、日本糖尿病学会はHbA1cによる「血糖コントロール目標」の基準によれば、「合併症予防のための目標」は7.0%未満、「治療強化が困難な際の目標」は8.0%未満です。
「治療強化が困難」というのはわかりにくいのですが、「何らかの理由で積極的な治療が行えない場合でも、せめて8.0%以下にはしましょう」というような意味です。
つまり、8.0%というのは糖尿病コントロールの基準から考えると決して十分ではなく、できれば7.0%以下にするのが好ましいのですが、それが無理ならば「せめて」8.0%以下にはしてください、ということです。
ですので、HbA1cが8.0%というのは、ある意味でぎりぎりの「水際」でもあります。糖尿病との闘いが長引くと、ついつい毎回数値をチェックするのを怠ってしまうということもあるかと思いますが、できる限り自分の数値を気にするようにしたいものです。
・塩分量を制限する
糖尿病の方は、普通の人よりも心不全になりやすいため普段から心臓に負荷をかけないようにすることが大切です。前半でも少し触れましたが、その際に大切なのが「塩分を制限すること」です。
なぜ、塩分が心臓に負担をかけるのでしょうか。体内では、塩分(ナトリウム)と水分は結びつきやすいのです。塩分を摂取すると、当然ながら血液の中の塩分濃度が高くなります。塩分濃度が高いと周囲の細胞から水を引き出し結びつこうとする働きがあります。
結果、水分を取られた細胞は壊されてしまうのです。ナメクジに塩をかけた場合、ナメクジは縮んでしまいますね。あれは表皮に振りかけられた塩分の濃度が高いため、水分がどんどん外に流れてしまうのです。
これは人にとってたいへん危険な状態です。このようなことを防ぐために体内にはバソプレッシンという濃度を一定に保つホルモンがあります。体内の塩分が高くなるとこのホルモンが分泌され、水分の均衡を保とうとするのです。
ただし、バソプレッシンには高血圧を招く作用があります。取り込まれた塩分の濃度を下げようと、のどが渇き、水分を飲むようになります。結果、体内の水分量が増えます。以上が、塩分過多が心臓に負担をかける理由です。
米国心臓協会は、世界中の成人の4分の3が毎日推奨量の2倍近くの塩分を摂取していると警笛を鳴らしています。日本の基準では、男性は10g未満。女性は8g未満です。年齢が高いほど、「漬物」から塩分を取る割合が高いのだとか。ちなみに、梅干し一個には約3gの塩分が含まれています。ほかに例を挙げるとみそ汁一杯1g程度、焼き魚定食で4から5g程度です。とはいえ、毎回の食事で塩分量を計測するのも至難の業です。簡単な減塩ポイントをご紹介しましょう。
・魚は干物や塩漬けよりも、刺身や素焼きにする
・しょうゆは直接かけずに小皿にとってつける
・みそ汁は具だくさんにする
・ラーメン、うどんなどのスープは飲まない
・塩のかわりに、酢・うまみ・薬味などを使って味に変化を持たせる
今回のまとめ
いかがでしたか。糖尿病と心不全の知られざる関係、ご理解いただけたでしょうか。
ポイントは、なんといっても糖尿数値を基準値にできる限り近づけること!
それから塩分制限など心臓の負担を和らげる習慣を持つことが大切です。
・糖尿病性腎症を合併することで、心不全のリスクが高まる
・HbA1cの値を、8.0以下できればそれ以下に下げるよう気をつける
・塩分量は、女性で8g以下、男性で10g以下となるようにする
・塩分と食習慣は密接な結びつきがある。日ごろからの習慣づけが大切
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食事制限や運動などを頑張っていても、なかなか数値が下がらないと悩んでおられる方は多いのです。
どうして、なかなか改善しないのでしょうか。
実は、それには深~い訳があるのです。
その訳とは何でしょうか?
それは実は、糖尿病の本当の原因は、単に食事の摂り過ぎや、運動不足だけではないからです。
えっ!?
じゃあ、何が原因なの?
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