糖尿の遺伝子発見??
日本人は欧米人ほど太ってないよなあ・・・
なのに、なぜ糖尿病の人が多いのだろうか・・・
そんな風に、思ったことありませんか?
太っているから糖尿病になりやすいのか?
糖尿病になるから太るのか?
太った人は、みんな糖尿病になるのか?
痩せている人は糖尿病にはならないのか?
色々考えるとナゾが深まりますねえ・・・
そこで考えられるのが、糖尿病と遺伝子の関係です。
糖尿病なりやすい体質は遺伝する”とかなり前から言われてい
ますが、実際に、両親がともに糖尿病の場合、65歳までに糖尿病
になる確率は40~50%と高くなっています。
さらに、一卵性双生児の場合は、41~94%というのですから驚き
です。
ただし、糖尿病が遺伝するわけではなく、あくまでも糖尿病にな
りやすい“体質”が遺伝するわけです。
では、欧米人も日本人も同じ遺伝子が影響しているのでしょうか?
独立行政法人理研化学研究所の報告によれば、
KCNQ1(ケーシーエヌキューワン)という遺伝子が、2型糖尿病の
関連遺伝子であるという研究結果を発表しています。
このKCNQ1遺伝子は、カリウムチャンネル遺伝子のひとつで、心
臓の筋肉でとても重要な働きをする遺伝子のことなんですね。
この遺伝子を持っていると、2型糖尿病になるリスクが
1.3~1.4倍に増えることが結果が出ていますので
【要注意遺伝子】だと言えますね。
日本人は、欧米人に比べて糖尿病での肥満の度合いは軽く、この
ことからも、人種によって糖尿病発病の仕組みが多少違っている
だろうと考えられています。
たとえば、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が
主な原因となっているタイプの方もいれば、インスリンそのもの
の分泌が悪くなる「インスリン分泌低下」が主な原因となってい
るタイプの方もいます。
もちろん、その両方が問題だという方も多い訳ですが、インスリ
ンの分泌低下ということに関して言えば、このKCNQ1遺伝子がイン
スリンの分泌に関わっているだろうと言われているのです。
なぜなら、インスリンの分泌調整にカリウム電流が重要な役割を
果たしているからなんです。
そこから、カリウムチャンネル遺伝子であるKCNQ1遺伝子が関与
しているだろうと推測できるわけです。
遺伝子的要素に生活習慣的要素が加わると・・・
現在、糖尿病患者の95%が2型タイプだと言われていますが、そ
こに、このKCNQ1遺伝子というものが影響していることがわかり
ましたね。この遺伝子を持っていると、糖尿病になる確率が上が
ってしまうという訳です。
では、遺伝子だけの問題なのでしょうか?
遺伝子的要素だけで糖尿病の原因が成り立つとしたら、飽食の時
代といわれるはるか以前から、糖尿病になる人が多くても不思議
はありませんよね。
同じ遺伝子を持ちながらも、昔は少なかった糖尿病が、ここ数10
年で爆発的な患者数になり、40歳以上の4人に1人が予備軍も含め
た糖尿病患者だとすれば、やはり生活習慣との因果関係を疑うに
は十分な数字だと言えるのではないでしょうか。
それを証拠づけるように、2型糖尿病の場合、糖尿病になりやすい
体質という遺伝子的要素と生活習慣的要素が重なったときに発症
するということが科学でも証明されつつあります。
茨城県つくば市の松本行洋医師の研究チームが、英医学誌に発表
した説によれば、『2型糖尿病は、毛細血管の血流が滞る「微小循
環の悪化」から始まる』となっています。
運動不足などから毛細血管の数が減少し、これにストレスや食べ
過ぎが加わり、血液がネバネバして細い血管を流れにくくなって
しまうため、細胞に届くはずの血液が不足し、その結果、インス
リンも届かないことになってしまうということです。
毛細血管の血流が滞る微小循環の悪化が・・・2型糖尿病と大き
く関わっている、ということなんです。
この毛細血管について、すこ~しだけお話したいと思いますね。
わたしたちの身体には、無数の血管が存在しています。身体中の
血管を一本につなげると、どれくらいの長さがあるか、ご存知で
すか?
何と、10万キロ!にもなります。
これは、地球を約2周できるほどの長さなんですよ。
すごいですよね!
こんなにいっぱいの血管が、わたしたちの身体中に張り巡らされ
ているのですが、そのほとんどが毛細血管と呼ばれる髪の毛より
も細い血管になります。
身体中の毛細血管の本数は、1500~1600億本もあるとも言われて
いるんですよ。血管には動脈のような太い血管もありますが、ほ
とんどがこの毛細血管と言えます。たとえば、筋肉1平方センチ
(1cm×1cm)の中に、約50本ほどの毛細血管が常時、血液や栄
養を送り込んでいると言われています。
これが、身体中の至るところでそうなっている訳ですから、わた
したちの身体は、毛細血管によって支えられていると言っても、
過言ではないですよね。
それで・・・
この毛細血管の血流が滞る微小循環の悪化が、糖尿病と大きく関
わっているということなんです。
食べ過ぎや飲み過ぎ、脂分の多い食事、運動不足、ストレス、こ
ういった要因によって、血液はネバネバドロドロしていきます。
そういった、ドロドロ血液が、髪の毛よりも細い毛細血管の中を
通っていくのは至難の業です。
ドロドロ血液
↓
毛細血管の中を通りにくい
↓
細胞に栄養やインスリンが届かない
↓
糖尿病の発症や悪化
簡単に言うと、こういう経過を辿る可能性が大という訳なんです。
それでこの研究結果からも分かるとおり、裏を返せば、過食をや
め、ストレスを減らして血液をサラサラにしていけば、糖尿病は
改善し予防もできると考えられますね。
ちなみに、最近の中医学でも、糖尿病は毛細血管の血流が滞るこ
とが原因であるとされていて、悪化すれば失明や下肢の切断など
ともなりかねないとしています。
また、日本糖尿病学会理事長で東京大学の門脇孝教授によれば、
「生活習慣を変えれば、飲む薬を減らせる」と糖尿病と生活習慣
の関係性を語っています。
いずれにせよ、体質遺伝に関しては本人ではどうしようもないわ
けですから、食生活の改善や運動を習慣化するなど、生活習慣を
見直すことで、糖尿病の予防と改善に大きな影響を与えるという
ことが言えますね。
【微小循環とは】
微小循環とは、「毛細血管の血液」「毛細リンパ管のリンパ液」
「血管・リンパ管・細胞の間をみたす組織液」の3つの流れの総
称。この3つの流れが滞ると、体の隅々まで酸素や栄養を運んだ
り、老廃物を回収したりすることができず、血液の流れが悪く
なりドロドロになってしまいます。
今回のまとめ
さて、今回は糖尿病と遺伝子の関係を裏付けるものとして、科学
的データも交えてお話させていただきましたが、いかがでしたか?
・日本人には、カリウムチャンネル遺伝子のKCNQ1遺伝子が関係し
ていて、インスリンの分泌調整に大きな影響を与えている。
・糖尿病は、糖尿病になりやすいという体質的な遺伝と食事や運
動などの生活習慣が原因になっている。
→ 関連項目 ドロドロ血液の恐怖-血栓ってなに?
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