前回は、インスリンの無駄遣いについてお話ししました。限りある資源であるインスリンは、分泌されすぎると体内で「慣れ」が起こり、そのためにどんどん量が増えるのでしたね。
そのきっかけは、「肥満細胞」
肥満細胞から分泌させる物質がインスリンの効きを悪くし、「インスリン抵抗性」を増大させるというお話でした。
しかし、インスリン抵抗性を増大させてしまうきっかけは、他にもあったのです。
いったいどんなものでしょうか?
では、どうぞご覧ください!
※「糖尿病と闘う」とは、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて、医師の指導のもとで、糖尿病が悪化しないように真剣に取り組むことを意味します。特定の食品が糖尿病に効くことを示唆するものではありません。
※ご紹介する声は、特定の食品が疾病に効くことを示唆するものではありません。あくまでも、読者の皆さまが医師の指導のもとで食事療法・運動療法・薬物療法に取り組まれた結果です。
インスリンの無駄遣いが起こる理由その2
肥満のほかに、インスリン抵抗性と関係するほかの要素は、「高血圧」と高コレステロールに代表される「脂質異常症」にありま
す。
ひとたびインスリンが効きにくくなると、それを補うためにインスリンが多量に分泌されるようになり、「高インスリン血症」を
招いてしまいます。高インスリン血症になると、交感神経が緊張してしまうために、腎臓でナトリウム(塩分)が排泄されにくくなってしまいます。
体内の塩分量をなかなか減らすことができないため、濃度を薄くしようとして水分をため込みやすくなってしまうので血液量も増え、どんどん血圧が高くなるというわけです。それに伴い血管の壁も固くなり動脈硬化も進みます。
またインスリン抵抗性は、脂肪やコレステロールを分解しにくくします。血液の中には、中性脂肪を分解して細胞内に取り込む「リポたんぱくリパーゼ」という酵素があるのですが、これはインスリン抵抗性によって効果が低下してしまいます。
そうなると、中性脂肪は、代謝されないまま行き場をなくして肝臓へ流れ込み、肝臓に貯め込まれるわけです。こうなると、高コレステロールや肥満につながってしまいます。
インスリン抵抗性は、「肥満」「高血圧」「脂質異常症」といったメタボリック症候群とは切っても切り離せない関係にあることがおわかりいただけるでしょうか。
これらはいうなれば、「悪の仲間」。どれか一つの仲間になると、あっという間に引き込まれて、ほかの者とも仲間になってしまうのです。
この負の連鎖を断ち切らない限り、どんどん悪循環に陥っていくことがお分かりいただけると思います。
インスリン抵抗性を下げ「節インスリン」をするために
これまでお話ししたように、インスリンの無駄遣いはインスリン抵抗性を招いてしまいます。インスリンを増加させず、「体を慣れさせない」ためのポイントをお話ししていきましょう。
その1.毎食まずは野菜からはじめる
よく知られているように、同じ食品であっても食べる順番によって血糖値の上昇が異なります。急上昇を避け、緩やかに上昇させればさせるほど、インスリンの分泌は少なくて済みます。
ポイントは食物繊維たっぷりの野菜。空腹時は、胃が空っぽで吸収が良いため、ご飯などの糖質を食べると一気に消化されて血糖値が跳ね上がってしまいます。最初に野菜などの繊維質を食べることで、その後に食べたものの消化と吸収が緩やかになるため、インスリンの分泌も少量で済みます。
食事内容によっては、野菜やサラダがないかもしれません。そんなときでも、「味噌汁のほうれん草やネギ」「焼肉に付け合わせのキャベツ」「副菜のキムチ」などの野菜を目ざとく見つけ、最初に食べてしまいましょう。
ご飯、お味噌汁、副菜とバランスよく食べる「三角食べ」は理想的ですが、糖尿の方にとってはイマイチ!
血糖値のことを優先に、野菜から食べましょう!
2.夕食は睡眠の3時間前に済ます。
夜遅くに多く食べて、消化しきる前に就寝してしまうとインスリンの無駄遣いになります。睡眠中は体を動かさないために消化が遅く、いつまでも胃腸に食べたものが残っています。このため、インスリンは耐えず分泌を求められてしまい、結果、体が慣れやすくなってしまいます。夕食は早い時間に済ませ、3時間以上空けてから就寝しましょう。
ちなみに、「食べた内容」で食事を評価するのではなく、食べた時間や吸収の速度によって、体に与える影響が異なることに注目する考えを「時間栄養学」といいます。最近盛んに研究され始めている分野なんですよ。
3.朝ごはんは、11時までに食べる
朝食を食べる時間は、非常に重要です。ある研究によれば、同じ内容であっても朝8時に食べた場合と、昼12時に食べた場合とでは、その後の血糖値の上昇が全く異なったそうです。遅い時間に朝食を取るとそれだけ欠食している時間が長いため、食事をとった時に急激に吸収してしまいます。
4.運動療法では、内臓脂肪だけでなく皮下脂肪もターゲットに
いうまでもなく運動療法は、肥満を解消しインスリン抵抗性を下げるうえで重要です。ただし、その際は内臓脂肪だけでなく皮下脂肪も同様に減少させていく必要があります。
内臓脂肪とは、お腹の内側、内臓周囲に付着する脂肪のことで、増えすぎると太鼓腹のようになってしまうのが特徴です。「メタボリックシンドローム」の指標の一つである内臓脂肪は、糖尿病含む生活習慣病を予防するうえで減少させていかなくてはいけません。
ただし、最近はそれだけでなく皮下脂肪も同時に減らしていく必要があると考えられています。皮下脂肪は、内臓脂肪とは反対に、皮膚のすぐ後ろに付着する脂肪のことで、お腹や二の腕をつまんだときに「ぷにっ」とする部位。
内臓脂肪は基礎代謝を上げることで燃焼しやすくなりますが、皮下脂肪は摂取カロリーを制限することで落とすことができます。
したがって、運動療法では基礎代謝を上げるための軽い筋肉トレーニングを行うと同時に、エアロビクスやウォーキング等の消費
カロリーを増加させるための運動も行う必要があります。これら異なる運動を交互に行うのも良いでしょう。
今回のまとめ
「山椒は小粒のほうがピリリと辛い」という言葉があります。インスリンも同様に、少量でもってしっかり効かせるのが糖尿病と
闘う上でのコツであります。インスリン抵抗性を改善し、節電ならぬ節インスリンに努めましょう。
・高血圧と脂質異常症が、インスリン抵抗性に関与する
・食事は野菜から初めて、睡眠の3時間前には済ます
・朝ごはんは、11時までに食べよう
・運動療法はバランスよく行う
→ 関連項目 インシュリン治療の前に
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