糖尿病の治療のひとつであるインスリン療法は、インスリンを注入するために患者が扱いやすいペン型の注射を利用するというのが主流です。インスリン注射の回数は人によって異なり、少ない方だと1日1回、多い方だと1日4回~5回打つこともあります。
1日1回ペースのインスリン注射なら、大きな負担を感じずに続けることができるかもしれません。しかし、1日に何度もインスリン注射を打つとなったら手間がかかり、それを大きな負担と感じてしまうこともあります。特に1型糖尿病の方は、基本的な治療がインスリン療法となるため、1日に数回インスリン注射を打つことが苦痛だと感じる場合もあります。また、注射を何度も打つことで皮膚に跡が残ってしまうこともあります。そのため、糖尿病の方の中にはインスリン注射を避けたいと考える方もいます。
そこで今回は、注射以外のインスリン療法についてご紹介します。
まずはインスリンについて知ろう
インスリンは血糖値を安定させるために必要なホルモンで、4つの重要な働きを担っています。「血液中のブドウ糖を細胞などに運んでエネルギーとして使う」「肝臓や筋肉で血液の中のブドウ糖をグリコーゲンに変えて蓄える」「余ったブドウ糖を脂肪に変えて蓄える」「肝臓にあるグリコーゲンをブドウ糖に変わるのを防ぐ」です。この4つの働きによって、血液の中にあるブドウ糖の量を減らして血糖値を下げて安定させることができます。
糖尿病の方は、インスリンを上手く分泌させることができません。インスリンの分泌が上手くできないと、血液の中にブドウ糖が増えてドロドロの血液になります。血液がドロドロの状態で血管を流れると、血の塊である血栓ができて血管が詰まりやすくなります。血管が詰まると、糖尿病が悪化するだけでなく合併症を引き起こす原因にもなります。1型糖尿病の方は特にインスリンの分泌が上手くできない状態が続くので、インスリンを注入しないと症状が悪化しやすくなります。
注射以外のインスリン療法とは?
糖尿病のインスリン療法の主流といえば、注射によるインスリンの注入です。しかし、注射だと「1日に何回も注射する必要がある」「注射を打った跡が残るかもしれない」といった負担や心配な点があります。そのため、糖尿病の方の中には「注射以外の方法がよい」と希望することもあります。注射以外のインスリン療法を希望する場合には、「インスリンポンプ療法」がおすすめです。
インスリンポンプ療法とは、細いチューブと注射器がつながっており、小型のポンプ器を使ってインスリンを体内に注入する治療です。インスリンポンプは専用の小型ポンプ器にインスリンが入っており、チューブの先端にある小さな針から注入できます。皮下まで届くように針を刺してテープで固定するだけで自動的に注入することができます。ポンプ器の中には3日~4日分のインスリンを常備できるので、注射での療法と違って毎回針を刺す必要がありません。ポンプ器内のインスリンがなくなりかけたら、交換するだけで再度使用することができます。インスリンポンプの機器は、摂取した炭水化物の量を入力すると適正なインスリンを注入する量を計算できるので、時間ごとに注入量を調整できます。
毎日何度も注射することを避けるのであれば、インスリンポンプ療法に切り替えてもよいかもしれません。
自分に合うインスリン療法を
糖尿病の治療に欠かせないインスリン療法は、インスリンの分泌量を調整するために必要な治療です。現在ではインスリン療法の主流であるインスリン注射や小型ポンプを活用したインスリンポンプ療法があります。患者自身が、自分に合ったものを選ぶのが望ましいといえます。自分に合うインスリン療法を選び、糖尿病を改善できるように続けていくことが大切です。
→ 関連項目 インシュリン治療の前に