「免疫」というコトバ、もはや知らない人はいないでしょう。
それなのに、「では、免疫とは何ですか?」と聞かれると、意外と答えられなかったりして……。
かくも、「免疫」というのは、「声は聞こえど姿は見えない」という忍者のような存在なのであります。
しかし、免疫と糖尿病は切っても切れない関係にあることはたしか。
今回は、気になる「糖尿病と免疫のお話」について。
そもそも免疫とは何なのか、糖尿病になると免疫はどう変化するのか、そして、免疫を高めるにはどうしたらいいのか……。
免疫と糖尿病にまつわる素朴な疑問をじっくりと解き明かしていきましょう!
※「糖尿病と闘う」とは、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて、医師の指導のもとで、糖尿病が悪化しないように真剣に取り組むことを意味します。
特定の食品が糖尿病に効くことを示唆するものではありません。
※ご紹介する声は、特定の食品が疾病に効くことを示唆するものではありません。あくまでも、読者の皆さまが医師の指導のもとで食事療法・運動療法・薬物療法に取り組まれた結果です。
糖尿病と免疫の関係
毎年冬になると、どこからともなく聞こえてくるのが「インフルエンザ」の話。
冬のニュースで必ず報道されると言っても過言ではありませんが、このインフルエンザと糖尿病の関係を調べた興味深い研究があるのです。
カナダの大学で8年間に渡り、インフルエンザで入院した患者16万人を対象に行われた研究があります。
研究の結果、糖尿病患者はそうでない人に比べて、インフルエンザの発症率が高いことがわかったそうです。
また、アメリカとカナダの糖尿病学会は、糖尿病の患者で血糖コントロール不良の状態が続くと、免疫機能が低下するために、インフルエンザだけでなくすべての感染症にかかりやすいと指摘し、すべての糖尿病患者がインフルエンザの予防接種を受けるべきだと推奨しています。
研究者は年齢にも言及しています。いわく、「糖尿病をもつ働き盛りの年齢の人は、インフルエンザに感染するリスクが高いことが分かりました」とのことです。
また少々ショッキングな話ではありますが、日本国内において、1991年から2000年における糖尿病患者の死因の全国統計を取ったものがあります。
第1位は悪性新生物、第2位は血管障害となっており、第3位が感染症でした。
糖尿病ではない人の死因と比較すると、第1位と2位は同じですが、こちらは第3位は脳血管疾患です。
一般の人の死因と比べて、糖尿病の患者の場合は感染症のリスクが高いことがお分かりいただけるでしょう。
またこれらの特徴は、年々増加傾向にあるということですから、糖尿病と闘う者として決して無視できない事態なのであります。
糖尿病が免疫低下を招く理由
このように、糖尿病患者がそうでない人に比べて、インフルエンザを始めとする各種感染症にかかりやすいと言うことは、残念ながら疑いようのない事実のようです。
その理由についてお話しする前に、「免疫とは何か」について、かいつまんで説明しておきましょう。
免疫というのは、体の中にある異物に対する「抵抗システム」を指します。システムですので、胃や腸や脳といった肉眼で見える器官で存在するわけではありません。
ではどこにあるかというと、基本的には血液中に存在します。
血液の中には、赤い色のもととなっている赤血球がありますが、他にも白血球の一種である好中球というものがあります。これらが外敵と戦う兵隊のような役割を果たします。
細菌やウィルスといった敵が体内に侵入してくると、好中球の数は突如として増え外敵と戦いだします。その過程で発熱したり、鼻水が出たりします。風邪の症状などでも見られるこれらの反応は、免疫が体内で働いてくれている結果なので、実際には決して悪いものではないんです。
しかし、何らかの原因で免疫システムが弱ると、好中球すなわち兵隊の数は増えないままになってしまいます。
そして、いつまでも体内に外敵が居座ってしまう状態となり、場合によっては、肺炎やがん、歯肉炎、皮膚病などの疾患が慢性化することになるのです。
では、糖尿病になるとなぜこの免疫システムが低下するのでしょうか?
さきほど、兵隊のお話をしました。白血球の一種である好中球は、血液中にある無色半透明のアメーバ状の姿で存在しています。
アメーバ状と言いましたが、姿だけでなく、アメーバと同じような働きをします。
住居である血液中で、外敵を見つけるやいなや、まるで意志があるかごとく、触手を伸ばしその外敵を体内に取り込みます。これを、敵を食べてしまうことに見立てて、「貪食(どんしょく)作用」と言います。
そして、この貪食作用を主に行っているのが、好中球の中にある、「殺菌性特殊顆粒」というものです。この殺菌性特殊顆粒は、敵には果敢に立ち向かう頼もしい存在であるのですが、残念ながら天敵がいるのです。それが、「アルコール」なのです。
「アルコールに弱いだって?俺と一緒じゃないか」と思った方、まぁまぁそうあせらないで下さい。
アルコールと言ってもお酒のことではありません。アルコールはアルコールでも糖アルコールのことです。
これは、別名「ソルビトール」と言われています。
ソルビトールという言葉をご存知の方は多いと思いますが、これは糖質の一種。
したがって、血液中に糖分が多ければ多いほど、好中球は糖アルコールによるダメージを受けてしまい働けなくなってしまうのです。
もうお分かりですね?糖尿病対策が上手くいかず、高血糖状態が続いてしまうと、血液中に糖が増えた状態となるため、それによって好中球がダメージを受けてしまい数が減ってしまうわけです。そのため、敵が侵入し「さあ戦だ!」となった際にも十分な
兵隊の数が揃わないために、戦えなくなってしまうのです。
これが、糖尿病患者の免疫が低い理由の一つなのです。
今回のまとめ
われわれはふだん何気なく、人混みの中を歩き、いろいろな食物を口にしていますが、実はその中には外敵がいっぱい。
目に見えないウィルスや細菌が、われわれの体内に進入するのを今か今かと待っているのです。そして、それらが侵入した際に、ブロックしてくれるのが免疫システムの働き。
目に見えない存在だけにありがたみを感じませんが、実は免疫というのは生命そのものを握る重要なシステムなのです。
・糖尿病になると、インフルエンザを始め各種感染症のリスクが高まる
・あらゆる外敵から、体を守る働きを免疫システムという
・免疫システムは、主に白血球の一種である好中球が司る
・高血糖状態が続くと、好中球はダメージを受け、免疫システムが弱まってしまう
次回は、糖尿病であっても免疫をしっかりと高めて外敵から体を守るための方法をお伝えします!
→ 関連項目 糖尿病と感染症について
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