糖尿病を発症してしまうと、健常者と比べてガンに罹患する可能性が高まることが分かっています。
はたして、どのような理由からその可能性が高まるのでしょうか。
以下では、糖尿病とガンの関係についてご紹介します。
健常者と糖尿病患者の違い
人の体内に取り込まれた糖分は、グルコースに分解された後に小腸で吸収されます。その後、血液に乗って全身を巡り、脳や筋肉を動かすエネルギーとして利用されます。なお、血液中のグルコースのことを血糖と呼びます。
エネルギーとしてすぐに使用されない血糖は、膵臓から分泌されるインスリンによって、血液中から肝臓や細胞内に取り込まれます。この取り込まれた血糖はグリコーゲンとして蓄えられ、エネルギーが必要になった場合に血液中に送り出されます。
このインスリンの働きによって、血糖値が正常値に保たれています。
健常者の体内では上記のインスリンの働きが正常に行われ、その血糖値は90mg/dlに保たれます。それに対して、糖尿病患者の体内ではインスリンが正常に働かず、高血糖状態が続いてしまいます。
なお、空腹時の血糖値が126mg/dl以上であると、一般的に糖尿病と診断されます。
糖尿病とガンとの関係
厚生労働省やアメリカの専門誌の発表によると、糖尿病を患っている場合、健常者と比べてガンに罹患する可能性が高くなるといわれています。例えば、健常者と比べて肝臓ガンに罹患する可能性は約2倍高くなり、膵臓ガンの場合には約1.9倍高くなります。また、大腸ガンの場合には1.4倍ほど上昇します。
性別によって、ガンに罹患しやすい臓器も異なることが判明されています。男性の場合は、肝臓や膵臓、または腎臓がガンに罹患しやすく、女性の場合は、肝臓や卵巣、または胃がガンに罹患しやすくなります。
糖尿病とガンとの間にあるはっきりとした因果関係については、未だ分かっていません。有力説としては、健常者の頃に比べて増加したインスリン量が関係しているといわれています。
健常者ならば十分血糖値を下げられるインスリンの量でも、糖尿病患者には効果がありません。そのため、膵臓がインスリンを血液中に過剰に分泌することで、血糖値をどうにかして減らそうとします。その結果として、血液中のインスリンの量が上昇してしまい、高インスリン血症状態を引き起こします。
この状態になると、細胞増殖を助ける効果を持つIGF-1(インスリン様成長因子Ⅰ)と呼ばれる物質が活発的になります。そして、この物質によって、臓器にあるガン細胞の増殖が行われることにより、ガンの発生リスクが上昇すると懸念されています。
血液中のインスリン濃度が正常であれば、IGF-1はIGFBP-1(インスリン様成長因子結合タンパク質-1)によって活動が阻害されています。しかし、血液中のインスリン濃度が増加してしまうことで、IGFBP-1の生成が困難となり、IGF-1の活動を阻害することができなくなってしまうのです。
他の説としては、特定のウィルスへの感染によって糖尿病とガンの発症リスクが同時に高まることがあげられます。そして、ガンの発症よりも先に糖尿病を発症したことにより、上述したIGF-1の活動でガンの発症リスクがさらに高まってしまった場合です。
特定のウィルスの例として、ピロリ菌や肝炎ウィルスがあげられます。これらに感染してしまうと、一部の胃ガンや肝臓ガンを引き起こしやすくなるだけでなく、糖尿病を患う可能性もあります。例えば、肝炎ウィルスへの感染によって肝硬変が引き起こされると、肝臓の機能が正常時よりも低下します。そして、血糖をグリコーゲンとして蓄える肝臓の機能が正常に働かなくなることで、血糖値の低下が正常に行われなくなり、高血糖状態が引き起こされます。その結果として、インスリンの過剰分泌から血中インスリン濃度が上昇し、糖尿病が引き起こされます。そして、IGF-1がガン細胞の増殖を促すことで、ガンの発症率も高まるといわれています。
ガンを予防するためには、糖尿病の予防が大事
糖尿病には、Ⅰ型とⅡ型の2つの種類があります。Ⅰ型糖尿病は、膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されてしまうことにより引き起こされます。Ⅱ型糖尿病は、不規則な生活や運動不足などによって引き起こされます。
日本人の糖尿病患者の9割以上はⅡ型糖尿病患者といわれており、規則正しい生活を送ることによって予防することが可能です。規則正しい生活を送るために改善すべき点としては、次の4点があげられます。
1.肥満
肥満による内臓脂肪の増加は、インスリンの働きを抑制させ、血糖値の上昇を招きます。もしもメタボリック・シンドロームと診断された場合には、早急な対処が重要です。
ジョギングやウォーキングといった軽めの運動を定期的に行うことで、肥満の改善を図ることができます。
2.食生活の乱れ
頻繁な外食といった栄養バランスが偏りがちな食生活は、肥満や生活習慣病を引き起こしやすくなります。また、暴飲・暴食も血糖値を上昇させる原因になります。
栄養バランスの整った食事を、自分の運動量に合わせて、摂取することが大切です。
3.喫煙
喫煙は交感神経の働きを促して血糖値を上昇させるだけでなく、インスリンの効き目を低下させます。なお、喫煙者が糖尿病を発症してしまうと、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症が非喫煙者に比べて起こりやすくなります。
糖尿病発症のリスクを下げるためにも、禁煙への取り組みが必要です。
4.過度な飲酒
過度な飲酒によって肝臓に強い負担がかかった結果、肝硬変などが引き起こされます。その結果、グルコースを蓄える肝機能が低下し、高インスリン血症が引き起こされます。また、アルコールには肝臓で蓄えられているグリコーゲンをグルコースに分解する働きを促進させる効果があるため、アルコールの量が多いほど飲酒後の血糖値上昇も高くなります。
なお、理由は解明されていませんが、適度な飲酒には糖尿病に罹患するリスクを低下させる効果があると考えられています。そのため、過度な飲酒は避け、適量な飲酒を心掛けることが大切です。
ガンの発症率を上昇させるⅡ型糖尿病の罹患リスクを下げるためには、生活習慣を改めることが大切です。また、もしも既に糖尿病を発症してしまっていても、ガンは生活習慣病であるため、規則正しい生活を送ることで罹患リスクを下げることができます。
「一病息災」(何かひとつでも持病があるほうが、健康に気をつけて過ごすことができるため、持病のない人よりも長生きすること)という言葉の通り、ガンの発症を予防して、健康的な生活を維持しましょう。
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