糖尿病といびきのビックリな関係!

糖尿病といびきのビックリな関係!

睡眠中に、呼吸と共に鼻や口から出す音「いびき」。舌を含む喉の周りの筋肉が緩み、重力により気道が狭くなることで、周囲の組織と空気が振動していびきが発生します。
そんないびきは、実は糖尿病と深い関わりがあることをご存じでしょうか。いびきを“かく”か“かかない”かにより、糖尿病の発症リスクにも差が生じるといわれているのです。
そこで今回は、糖尿病といびきの意外な関係性についてご紹介します。

いびきをかく人は糖尿病のリスクが高い!

「よくいびきをかく人は、ほとんどかかない人に比べ、糖尿病の発症リスクが2倍になる」これは、ハーバード大学公衆衛生大学院の医師・waelK.AI-Delaimy氏により発表されたものです。waelK.AI-Delaimy氏は、「喫煙が糖尿病にどんな影響を与えるのか」など、“糖尿病”と“日常生活における行動”の関係性について、さまざまな方面から研究を行っています。その一貫として、糖尿病といびきの関係性について研究したところ、いびきを頻繁にかく人はそうでない人に比べ、糖尿病の発症リスクが2倍も跳ね上がることが明らかになったのです。
上記の研究は、アンケートを元に行われました。アンケートの内容は、約7万人の女性を対象に“いびき”と“糖尿病発症の有無”を調査するというもの。このアンケートは、1980年代後半に始まってから10年間にわたり続けられました。

なぜ糖尿病の発症リスクが高まるのか?

いびきをかくことで糖尿病の発症リスクが高まる原因として、以下のように提唱されています。

1.いびきをかく人は酸素不足になりやすい
「いびきをかくことで酸素不足につながる」という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。これには、「睡眠時無呼吸症候群」が深く関係しています。睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まる病気です。すべての人に当てはまるわけではありませんが、いびきをかく人の中には睡眠時無呼吸症候群が多いといわれています。

2.カテコールアミンが増加する
酸素不足により引き起こされる問題が、カテコールアミンの増加です。カテコールアミンとは、血糖値を上昇させる働きを持つ神経伝達物質です。酸素不足によりカテコールアミンの分泌が盛んになると、当然ながら血糖値が上昇します。

3.インスリンの働きが弱まる
血糖値の上昇を抑制するためには、インスリンの働きが必要不可欠です。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中のブドウ糖(血糖)をさまざまな細胞に運ぶという重要な役割を担っています。しかし、酸素不足によりカテコールアミンの分泌が盛んになることで、インスリンの働きが阻害されてしまいます。すると、カテコールアミンにより高まった血糖値を下げることができず、糖尿病の発症リスクを高めてしまうというわけなのです。

なお、現時点では、上記は研究段階とされており、糖尿病の発症リスクを高める原因として確実ではありません。しかし信憑性は非常に高く、いびきに悩む方や睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、早めに専門の医療機関を受診することが望ましいといわれています。

睡眠時無呼吸症候群は、糖尿病とどんなつながりがある?

カテコールアミンの増加とインスリンの抑制は、睡眠時無呼吸による酸素不足から引き起こされるものです。糖尿病の発症リスクを抑えるためには、そもそも睡眠時無呼吸症候群を改善することが大切です。そして、そのためには睡眠時無呼吸症候群について理解しておくことが重要だといえます。

前述した通り、睡眠時無呼吸症候群とは眠っている間に呼吸が止まる病気です。主な特徴として、睡眠中は常時いびきをかいている、10秒以上呼吸が止まる状態が1時間に5回以上ある、他人と比較していびきの音が大きいなどがあげられます。
いびきをかいているからといって、必ずしも睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。しかし、いびきをかく方の中には、この病気を持つ方も多いといわれています。日中に強い眠気を感じることが多い方や、呼吸が苦しくて夜中に目覚めることが多い方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

“糖尿病の発症”と“睡眠時無呼吸症候群”の関係性を調査した研究報告があります。『Endocrine Practice』という米医学誌に掲載された研究報告によると、2型糖尿病の患者279人に対し調査を行ったところ、36%が睡眠時無呼吸症候群であったとされています。一方、健康な方の場合は、睡眠時無呼吸症候群になる確率は男性で4%、女性で2%といわれているのです。比較すると、睡眠時無呼吸症候群になる確率は30%以上の差があることが分かります。この研究結果から、「さまざまな要因の中でも、糖尿病は、閉塞性睡眠時無呼吸となる強力な資質である」と考えられています。

国際糖尿病学会(IDF)の疫病予防タスクフォースは、糖尿病患者に対し睡眠時無呼吸の検査を行うようにと、医師に勧告を出しています。これは、睡眠障害の治療は、糖尿病患者に多大な影響を与えると考えられているためです。これについてさまざまな報告が出されており、中には「他の単一の治療よりも、睡眠時無呼吸症候群の治療は血糖値の改善に有効である」という報告もあります。

このように、糖尿病と睡眠時無呼吸症候群には深いつながりがあるのです。

夜中に目が覚める方は要注意!糖尿病と不眠の関係

いびきや睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害により、眠りが浅くなったり夜中に目が覚めることが増えてしまったり、という方もいるのではないでしょうか。
実は、不眠も糖尿病の発症リスクを高める原因のひとつです。
不眠は、インスリンの作用を低下させてしまうといわれています。睡眠時間が極端に短い、睡眠中に起きることが多いなどで不眠が続くと、健康な方でもインスリンの作用が低下します。これにより血糖値が上昇し、糖尿病を発症するおそれがあるのです。また、糖尿病患者は、健康な方に比べてインスリンの働きが弱まっています。そのため、不眠によりインスリンの作用が低下することで糖尿病を悪化させるおそれもあるのです。
糖尿病患者には、夜中に目が覚めるという方が多いといわれています。少しでも心当たりのある方は、糖尿病を発症している可能性があるため、医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。

睡眠の質にこだわる!おすすめの改善方法

さまざまな研究などにより、いびきや睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害と糖尿病の関係性が重要視されるようになってきました。米国睡眠学会では、睡眠の質を改善するようにと呼びかけると共に、1日に7~8時間の睡眠時間を確保することが理想であると提唱しています。

また、質のよい睡眠をとるための改善方法として、以下のことを勧告しています。
・就寝時間を決め、これを習慣化する
・日中はベッドから離れて活動するよう心掛ける
・アルコールやカフェイン、睡眠を妨げるような薬物を摂取しない
・仮眠をとらない(仮眠をとるなら午後3時よりも前にし、1時間以内で済ませる)
・就寝前の入浴、食事、読書を避ける
・ベッドの中で考え事をしない
・眠れないときはベッドから出て静かに過ごす
・寝室の灯りを消し、涼しくて静かな環境を整える

質のよい睡眠をとることで、糖尿病をはじめとするさまざま病気を防ぐことができるといわれています。米ボルティモアで開催された「第22回睡眠専門家学会年次集会」でも、「良質な睡眠をとっている人は、健康的に高齢を迎える傾向がある」と発表されています。

いびき×睡眠時無呼吸症候群についておさらい

糖尿病の発症リスクを高めるだけでなく、糖尿病を悪化させる可能性もあるいびき。ここで、いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係性について再度ご紹介します。

7時間の睡眠時間のうち、30回以上無呼吸の状態になると睡眠時無呼吸症候群と見なされます。そして、いびきを頻繁にかく方の場合、その半数以上は睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いといわれています。
無呼吸の状態が続くと、脳へ酸素が送られず、酸素不足となってしまいます。酸素不足は日中の倦怠感や集中力の低下を招くだけでなく、糖尿病の発症や悪化の原因にもなり得るものです。また、他の病気につながるケースもあります。実は、睡眠時無呼吸症候群の方を対象に、10年間にわたり追跡調査を行ったところ、脳梗塞や心筋梗塞により死亡したケースが多いことが判明したそうです。
糖尿病をはじめ、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を防ぐためには、いびきを改善して睡眠時無呼吸症候群になるのを防ぐことが重要であるといえます。

「いびきは万病のもと」これは、東京大学医学部付属病院老年科の寺本真嗣氏の言葉です。大したことないと思われがちないびきですが、場合によっては大きな病気を引き起こすこともあるのです。そのため、少しでも体に異変を感じた場合はもちろん、家族から「いびきがうるさい」と指摘された場合は、できるだけ早めに医療機関を受診することをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の治療「CPAP療法」とは?

呼吸をすると、横隔膜が収縮して胸腔の中の圧が低下し、これにより空気が喉や気管を通り肺へと送り込まれます。この肺に通じる空気の通り道を気道といいますが、気道が狭い方の場合、空気が通ることで周りの組織が振動し、これが音となって現れます。この音が“いびき”です。睡眠時無呼吸症候群の方は気道が狭まっているため、頻繁にいびきをかいてしまう他、無呼吸による不眠などに悩まされることになるのです。これらの問題を解消するためには、空気が通るのに十分な幅の気道を確保することが必要不可欠といえます。

悪化したいびきや睡眠時無呼吸症候群の治療として、「CPAP療法」があります。CPAP(シーパップ)は「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字をとったもので、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」とも呼ばれています。現在は欧米や日本国内において、睡眠時無呼吸症候群の最もスタンダードな治療です。そんなCPAP療法は、専用装置にエアチューブをつなぎ、このエアチューブと鼻に装着したマスクを通して、気道へ空気を送り込むという仕組みになっています。これにより気道が正常に広がり、効率的に酸素を取り込めるようになることで、いびきや睡眠時無呼吸症候群を改善することができるのです。
適切に治療を進め上で重要になるポイントが、医療機関にて設定された専用装置を使うこと、そしてマスクを正しく装着することです。正しく使用し続けることで、高い効果が得られます。なお、マスクは強く締めすぎず、軽くフィットする程度がよいといわれています。横になると位置がずれる可能性があるため、睡眠中の体勢で位置の調節を行っていきましょう。

CPAP療法は、高血圧や糖尿病の治療としても採用されています。糖尿病を治療するためには、血糖値の上昇を抑えることも大切ですが、原因となっている部分を改善していくことも非常に重要です。いびきによる酸素不足が原因となっている場合、睡眠時無呼吸症候群の治療であるCPAP療法を行うことで、糖尿病を効率よく改善できるケースもあるのです。
糖尿病をはじめとする病気の発症リスクの軽減や、質のよい睡眠生活のためにも、早い段階でいびきを改善していくよう努めましょう。

他にもある!いびき改善方法まとめ

CPAP療法から分かるように、いびきを改善するためには狭くなった気道を広げることが重要です。いびき治療のひとつに「マウスピース」がありますが、こちらもCPAP療法と同様、装着することで空気が通るための気道を確保することができます。また、専用のネックピローを使って気道を確保するという方法もあります。
この他、口呼吸よりも鼻呼吸をするよう心掛けることもおすすめです。日中から鼻呼吸をするよう意識しておけば、睡眠中も口呼吸から鼻呼吸に切り替えることができ、少しずついびきを改善していくことができます。さらに、横向きに眠って気道を確保するという方法もあります。

さまざまな改善方法の中から、自身に合ったものを探してみるとよいでしょう。

友人Sの体験談 ~CPAP療法で快適な睡眠を手に入れた~

ここで、友人Sの体験談をひとつご紹介します。
やや太り気味で、「糖尿病の一歩手前」であることを自覚していたSは、長年“いびき”で悩んでいました。家族の協力の下、いびき改善用のグッズを購入しては試すというのも繰り返していましたが、期待しているような効果を実感できずにいました。そして、いびきは少しずつ悪化。家族の睡眠不足を解消するため、家族が眠りについてから眠るという生活スタイルを徹底していたそうです。
そんなときに巡り合ったのが、前述した「CPAP療法」でした。半信半疑になりながらも、鼻にマスクを装着したまま眠るという方法を続けたところ、10日ほどでいびきの改善に大きな効果が見られたといいます。
Sは現在、いびきに悩むこともなく、不眠も解消され、家族のストレスも軽減されたと喜んでいます。
なお、CPAP療法を始めたばかりの頃は少しばかり息苦しさや寝苦しさを感じたそうですが、10日もしないうちに慣れるため問題はないそうです。

いびきに悩む方は、医療機関を受診し、CPAP療法を試してみてはいかがでしょうか。

早急に改善して病気の発症を未然に防ごう

頻繁にいびきをかく方の中には、「誰でもかくものだから何も心配ない」と軽く考えている方や、プライベートな悩みであるため「他人にいびきの相談をするのは抵抗がある」と感じている方もいるはずです。特に女性の場合、恥ずかしさが先立って医療機関を受診することをためらってしまう方もいるのではないでしょうか。しかし、いびきは糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などを発症させるおそれのある、非常に危険なものです。また、放置することで糖尿病を悪化させてしまうこともあります。
医療機関を受診し適切な治療を受けることで、いびきを改善し、糖尿病の発症を防ぐことが可能です。いびきの悩みを改善し、健康な体を整えるためにも、少しでも異変を感じたら医療機関を受診するようにしましょう。

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