糖尿と肝臓病の関係とは?

糖尿と肝臓病の関係とは?

「胃が痛い」「お腹が痛い」と体調不良を訴えることは、多くの方が経験したことがあるかもしれません。これに対して、「肝臓が痛い」と訴えたことがあるかと問うと、ほとんどの方は「ない」と答えます。その理由は、肝臓が「沈黙の臓器」といわれているよう痛みを感じることがないからです。
肝臓には痛覚を感じる神経がないので、肝臓に負担がかかっていても痛みを感じず、気が付くことが困難です。
肝臓に負担がかかり続けると体へ自覚症状が出てきます。自覚症状は、体のだるさ、食欲不振、吐き気、黄疸などがあります。これらの症状が出てくると、肝臓機能がかなり低下しており、既に肝臓が悲鳴をあげている状態です。
自覚症状が起こりだし治療を受けるとなったら、肝臓機能を正常な働きができるように整えるために生活が一変します。飲酒が禁止となり、摂取する薬が制限させることになります。特に注意したいのは、摂取することができる薬が限られるということです。他の病気が発症していて肝臓に負担がかかりやすい薬を服用している場合、治療が続けられないことがあります。そのため、肝臓を健康的に保つことを常に意識しておかなければなりません。
糖尿病の方は、肝臓機能が低下しやすく合併症として肝臓病になる危険性があります。肝臓病の危険性を回避するには、糖尿病と肝臓の関係について知る必要があります。

肝臓の働き

主な肝臓の働きは、「代謝(合成)」「解毒と分解」「貯蔵」の3つです。それぞれの働きは、以下の通りです。

1.代謝(合成)
食事によって取り込まれた食材から、体に栄養が送り込まれます。しかし、食べてすぐに体の隅々まで栄養が運ばれるわけではありません。
まず、食べたものが胃や腸で分解されて肝臓へ運ばれます。その後、肝臓でさまざまな栄養素を体の各部位へ吸収しやすいように代謝(合成)して形を変化させます。例えば、体に必要な栄養素のひとつである脂質を肝臓まで運ぶとします。肝臓は脂質をコレステロールやリン脂質、中性脂肪などに変えます。そして、それぞれを体の各部位に送り込めるように働きかけます。このような働きが他の栄養素にも行われて、体全体に必要な栄養を送り込めるように働く役割があります。

2.解毒と分解
食材の中には、食品添加物や菌などの体にとって有害なものが含まれていることがあります。有害なものが含まれている食材を食べてしまった場合、肝臓が解毒しようと働きかけます。解毒対象は、アルコール類や薬物などです。特にアルコール類には、有害物質であるアセトアルデヒドが含まれています。アセトアルデヒドは、飲酒時に顔が赤くなる、動悸や吐き気が起こる、頭痛が起こるなどの症状を引き起こす毒性作用があります。そのため、肝臓はアルコール類を摂取したときにアセトアルデヒドなどの有害物質を解毒し、分解しようと働きかける役割があります。しかし、飲酒量が多い方は、肝臓の解毒と分解が追いつかなくなり肝臓機能が低下していきます。

3.貯蔵
肝臓は、体のエネルギー源となるブドウ糖をグリコーゲンに変えて貯蔵する役割があります。そして、体に必要な状況となったときに貯蔵していたグリコーゲンを放出します。他にも、クロムなどの必須ミネラルやビタミンなども貯蔵されており、体に必要となったときに放出するという重要な役割があります。

これまで述べてきた通り肝臓は、体にとって重要な役割があります。基本的に食べたものは、肝臓を経由し、体の各部位に栄養素を運べるようにします。
体にとって有害ものを大量に取り込んでしまったら、肝臓に負担がかかります。肝臓に負担がかかる生活を送り続けることは、肝臓機能を低下させることにつながり大きな病気に発展する可能性が高くなります。

 

メタボリックシンドロームと肝臓病の関係

最近よく耳にする「メタボリックシンドローム」は、肝臓病を発症させるきっかけを作ります。
メタボリックシンドロームは長年の食べ過ぎや運動不足などが積み重なり、脂肪が体に蓄積したことで起こります。メタボリックシンドロームになると、糖尿病の発症率が高くなります。糖尿病が発症したら、肝臓へ負担を与えやすい状況になるので本来の働きができなくなっていきます。

メタボリックシンドロームになると「脂肪肝」になりやすくなります。脂肪肝は、肝臓機能が低下させる原因のひとつで、肝臓に中性脂肪が30%以上蓄積されている状態のことを指します。健康的な体の方は、肝臓に蓄積されている脂肪が2%~3%なので脂肪肝になると約10倍もの脂肪が蓄積されている状態です。
脂肪肝が起こる原因は、過剰な栄養摂取、過剰な飲酒などです。「食べることが好き」「お酒は毎晩飲んでいる」という方は、脂肪肝になっている可能性が高くなります。特にお酒が好きな方で脂肪肝の方は、非常に危険な状態です。
他にも、日本人の3人に1人は、体型関係なく脂肪肝の潜在的な兆候があるといわれています。脂肪肝になる方のイメージとして太っていることが原因だと思うかもしれません。しかし、太っていない方の5人に1人も脂肪肝だという報告があります。このことから、脂肪肝になる条件が体型ではないことが分かります。脂肪肝になっても、初期症状がありません。そのため、自覚症状が出始めた頃には、相当肝臓にダメージがある状態だといえます。
脂肪肝を放置すると肝臓炎から肝硬変に進行します。肝硬変まで進行してしまった場合、肝臓機能が停止して本来の役割を果たすことができなくなります。肝硬変は、本来の肝細胞の働きが繊維細胞で満たされたことが原因で起こります。正常な肝細胞は、破壊されても再生を繰り返して肝臓の機能を正常に保てるようにします。しかし、肝臓に負担がかかる生活を送っていると肝細胞の再生が追いつかなくなり、繊維細胞の働きが活発になって肝臓の一部が繊維化します。繊維化が進んだら肝臓の表面がデコボコとした状態となっていきます。肝臓の繊維化が進行したことで血流が悪くなり、栄養素の取り込みが不足します。また、肝臓の代謝機能も悪くなるので栄養素の分解が遅れてしまい、血糖値のコントロールが上手くできなくなります。他にも、栄養を貯蔵する機能が低下するので筋肉でエネルギーを作ろうと働きかけ、筋肉量が不足することもあります。なお、一度肝臓が繊維化すると、元に戻ることがありません。繊維化した部分は、本来の肝臓機能を果たすことができなくなり、さらに進行すると肝臓としての機能が働かず肝硬変となり、生死に関わる状況を作り出してしまうのです。
肝硬変の自覚症状としては、倦怠感や黄疸などが起こります。倦怠感は、肝臓の解毒作用の低下、タンパク合成の低下、栄養貯蔵能の低下などが関係して起こります。これらの機能が低下すると肝臓にグリコーゲンなどの栄養素が貯蔵できなくなるので、体がだるさを覚えて疲れやすくなります。

暴飲暴食の日々を続けているとメタボリックシンドロームになり、脂肪肝から肝硬変という経過をたどることが多いといわれています。このような状況を作り出さない方法は、日頃から健康的な生活習慣を過ごせるようにすることが大切です。

肝臓病になると糖尿病が酷くなる

メタボリックシンドロームのせいで糖尿病となり肝臓機能が低下すると、肝臓病が発症して糖尿病がさらに悪化しやすくなります。この悪循環を放置すると、体の状態がどんどん悪くなる一方で最悪の場合には死に至ることもあります。
悪循環を繰り返す理由には、血糖値が大きく影響しています。例えば、暴飲暴食ばかりを続けていると血糖値が上がり、すい臓からインスリンが大量に分泌されて血糖値が下がるように働きかけます。
「血糖値が下がるのでよいことなのでは?」と思ってしまうかもしれません。しかし、肝臓機能が低下した状態だとすい臓の働きが追いつかなくなり、肝臓へ余分な糖をどんどん取り込まれていく状態になり、血糖値が下がります。本来なら、肝臓とインスリンが正常に働きブドウ糖をさまざまな臓器細胞へ送り出すことで血糖値が下がります。しかし、肝臓機能が低下した状態だと血液中へ糖が流れず、肝臓に糖が取り込まれていき脂肪として蓄積されて脂肪肝が起こります。
脂肪肝になってしまった肝臓は、脂肪を利用して血液にブドウ糖を放出する働きが活発になり、血糖値が急に上昇します。血糖値が急上昇したら、さらにインスリンが過剰分泌されます。このサイクルは、インスリンを分泌しているすい臓が疲れてしまい本来の働きができない状態になります。本来の働きができないすい臓は、必要な量のインスリンを分泌できなくなるので糖尿病が悪化します。

以下、分かりやすいように肝臓機能の低下によって糖尿病が悪化する流れをまとめてみました。

生活習慣の乱れでメタボリックシンドロームになる

インスリンが過剰分泌しやすい状態になる

余分な糖が肝臓に蓄積する

糖がどんどん蓄積されて脂肪肝に

蓄積した糖を肝臓から放出

血糖値が上昇し、糖尿病が悪化

糖尿病が悪化したことでインスリンが過剰分泌する

すい臓が疲れてインスリンの分泌が不足

血糖値が下がらない

糖尿病がさらに悪化する

このような悪循環が起こり、やがて肝臓そのものが働かなくなり体にとって深刻な状態になっていきます。また、肝臓に深刻なダメージを与えてしまう状況は、糖尿病の合併症を引き起こすリスクが高まります。

肝臓がんになることもある

糖尿病やメタボリックシンドロームは、肝臓に大きな負担を与えることが分かりました。
そして、糖尿病やメタボリックシンドロームで肝臓がんへ発展する可能性が高くなると調査結果が多くあります。
厚生労働省の研究班が発表した検査結果では、高血糖や肥満などのメタボリックシンドロームの方は肝臓がんを発症するリスクが通常の方よりも2倍以上高まると発表しています。
厚生労働省の研究は1993年~2006年の間に、新潟、茨城、大阪、高知、長崎の計6カ所で40歳~69歳の男女約17,000人を対象に調査しました。その結果、メタボリックシンドロームの方のグループとメタボリックシンドロームではない方のグループで比べると、メタボリックシンドロームの方の肝臓がんのリスクが2倍高くなることが分かったのです。また、高血糖と体重が平均以上の方も肝臓がんのリスクが3.4倍なることも分かっています。
さらに、メタボリックシンドロームと糖尿病が重なると肝臓がんが発症する確率がさらに高くなります。肝臓がんの多くの原因はウイルス性ですが、メタボリックシンドロームと糖尿病の両方を兼ねそなえた状態だと非常にリスクが高くなるので肝臓がんを発症しやすい危険な組み合わせだといわれています。
他にも、厚生労働省の研究班は、肝臓がんのリスクが高くなる原因としてインスリン抵抗性なども影響していると考えています。
このようにメタボリックシンドロームが原因で糖尿病が進行することは、肝臓がんにつながる可能性が高くなります。メタボリックシンドロームと糖尿病になると肝障害や肝臓の繊維化によって肝臓機能が低下し、肝硬変になりさらに糖尿病が悪化、最終的に肝臓がんに進展すると示唆しています。
これまでの厚生労働省が行った研究は、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善につながります。そのため、肝硬変になったり、肝臓がんに発展したりすることを回避できることにもつながります。
このようなことから、日頃から食生活や生活習慣の見直し、健康的な生活を送れるように意識することが大切であることが分かります。

大切な役割がある肝臓を労ることが大事

肝臓は、体を健康的に保つために一生懸命働いている臓器です。そんな頑張っている肝臓は、日頃から意識してねぎらわなければ知らない内に負担をかけてしまうことがあります。
知らない内に肝臓に負担をかけてしまうのは、肝臓が痛みを感じることがないからです。そのため、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。沈黙する臓器だからこそ、自覚症状が起こり始めたら相当肝臓にダメージを与えている状態です。
糖尿病やメタボリックシンドロームと肝臓は、切っても切り離せない関係です。特に糖尿病は、肝臓に負担を与えやすく肝機能を低下させて、さらに糖尿病を悪化させたり、肝臓がんへ進行させたりします。また、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝になると肝硬変から肝臓がんに進行する危険性もあります。このようなこと考えると、健康的な肝臓を保てるように労る生活を送ることが大切です。
肝臓を労る生活は、栄養バランスを考えた食事や適度な運動を毎日続けることです。この生活を続ければ、血糖値が上がるのを防ぐことができ、肝臓への負担を軽くできます。

肝臓への負担を軽減できる生活を送っていても、血糖値が下がらないと悩んでいる方もいるかもしれません。これは、既に少しずつ肝臓への負担が蓄積されている可能性が高い状態です。
血糖値が下がらないと思ったら、ほとんどの方はインスリンの分泌量が不足していることを疑います。しかし、必ずしもインスリンが不足していることが原因だと言い切れません。中には、インスリンの分泌量が十分に足りているのに糖が下がらない方も多くいます。インスリンの分泌量が足りているのに血糖値が下がらない場合は、糖代謝の異常が起こっている可能性があります。
糖代謝の異常は、日頃の食生活や運動不足が影響して起こります。糖代謝に欠かせない必須ミネラルのクロムが不足することで、糖代謝の異常が発生します。
糖代謝の異常は、非常に複雑なので分かっていないことも多くありますが、体の必須ミネラルであるクロムが不足すると起こることが研究によって分かっています。そのため、肝臓を労りながらも不足しがちな必須ミネラルのクロムを意識して摂るようにしましょう。そうすると、健康的な肝臓を保って糖代謝の異常が起こらないようにできます。

まとめ

肝臓は、体重の約50分の1を占めているほど大きな臓器です。これは、臓器の中でも特に大きいものとされています。
肝臓は、全体の4分の3を切除しても再生します。どうして切除しても再生するのかについては、詳しく分かっていません。なお、強い再生力を持っている肝臓がダメージを受けて機能が低下するほどの状態になることは、長い年月に渡って不摂生な食生活や生活習慣の問題が関係していると判断できます。
不摂生な生活習慣を続けていることは、肝臓に直結し悪影響を与えてしまうもので大きなダメージを与えます。肝臓へ悪影響を与え続ける生活は、メタボリックシンドロームとなって糖尿病へと進行します。そして、肝硬変や肝臓がんなどの危険な病気へと発展して体へのリスクが高くなります。また、さらに糖尿病を悪化させてしまう悪循環も起こるので体の状態が悪くなる一方です。他にも、肝臓にダメージがあると肩こりや腰痛、体の歪みなども起こるといわれています。そのため、慢性的にこれらの症状が続くときは肝臓に負担が大きくかかり続けている可能性が高いと考えられています。
このような悪循環は、肝臓の状態がよくなるまで繰り返されます。このサイクルを断ち切るには、肝臓への負担を減らし本来の役割を果たせるように環境を整えることが重要です。肝臓機能が低下しないように、または再度機能が本来の働きを行えるように考えて、肝臓をケアして労りましょう。

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