糖尿病患者の災害時の備え

糖尿病患者の災害時の備え

近年、日本は地震や洪水などの大きな自然災害に巻き込まれることが増えています。自然災害は誰も予測することができないので、多くの方が不安になります。特に持病を持っている方は、「災害時に症状が悪化するかもしれない」などの不安な気持ちがさらに強くなります。
そこで今回は、持病として糖尿病を持っている場合、災害時にどう行動すべきかについてご紹介します。

インスリン不足が発生して大変だった新潟中越地震

2011年5月19日、札幌市で開催された第54回日本糖尿病会年次学術集会で、2004年に起こった新潟中越地震のときの医療体制に大きな不安が感じられたと報告されています。新潟中越地震が起こったときには、インスリンが不足してパニックが起こったり、どうしたらよいかと不安になったりなどの戸惑いを感じた方が多かったようです。確かに、自然災害は予測できないのでインスリン不足が起こることは避けられないかもしれません。とはいえ、災害が起こったとき「何をどうしたらいいのか」をあらかじめ把握しておけば命の危険を感じないようにできます。まさに「備えあれば憂い無し」なので、糖尿病などの持病を持っている方は過度に観的になる必要はありません。

災害用リュックに糖尿病患者に必要なものを

災害が起こった際に配給される食べ物には、糖尿病患者が普段食べてはならないものが多くあります。そのため、配給されたものを食べると症状が悪化するのではないかと不安を抱える方も少なくありません。
そこで重要になるのが、「災害用リュックに入れておく食べ物」です。現在は、いつ何が起こるか分からないので災害用リュックを用意している家庭も多くなっています。糖尿病の方は、災害用リュックに脳へ与えるエネルギーを切らさないための食べ物を入れておくようにしましょう。糖尿病患者は、低血糖になる恐れがあり、ブドウ糖を摂取できる甘いものや穀物を必ず災害用リュックに常備する必要があります。ブドウ糖は、薬局で販売しているブドウ糖のキャンディーや氷砂糖で十分です。穀物は、お米のレトルトや乾パンなどの緊急食糧を確保しておきましょう。他にも、普段食べてはいけないものでも栄養価が高い食べ物も用意しておくことをおすすめします。そうすれば、災害時に栄養が偏ったり、不足したりすることを防げるからです。
また、普段食事制限で炭水化物を控えている場合でも、体のエネルギーであり脳を動かすために必要なブドウ糖を送るために炭水化物が含まれているお米も入れておきましょう。通常の体は、食事の際にさまざまな形で栄養素とブドウ糖を分類し、吸収・取捨選択されていく仕組みになっています。
生命を維持するために脳を動かすことが最優先となるので、脳の唯一の栄養であるブドウ糖を送るための体のエネルギーが必要です。そのためには、炭水化物や甘いものを食べて体の状態を整える必要があります。
災害時は、食事制限することが困難な状態に陥ります。そのため、糖尿病であっても体の生命を維持できるようにお米や甘いもので脳の働きを正常に保つことが優先です。また、災害時の行動や安全を維持するためにも必要なことなので理解しておくことが大切です。
なお、災害が起こった現場に来る医療チームからブドウ糖をもらうことができます。医療チームが来た際には、足を運んで受け取り、点滴でブドウ糖を体へ送り込んで脳の働きを保てるようにしましょう。大きな災害が起こった地域ではしばらく避難生活を送ることになるので、その生活に対応できる体と正常な神経を保つこと、脳へしっかりとエネルギーを送って体を動かせるようにすることが大切です。

災害時の食事は本当に大丈夫なのか

「脳へのエネルギーを摂取することを最優先する」ことは、とても大事なことです。脳は体の司令塔になるので、脳を動かすブドウ糖がなければきちんと働くことができません。特に糖尿病の方は、インスリンの分泌によってブドウ糖を脳に届けることが難しいので、脳の働きを低下させやすい状態です。そのため、最優先することは、「脳を動かすために食べること」です。
しかし、だからといって災害時に配給される食べ物は食べても大丈夫なのかと悩む方もいるかもしれません。この悩みは、これまで真面目に糖尿病の治療を受けてきて、甘いものや穀類を控えて野菜やタンパク質を中心とした食生活を送ってきたことで生じます。しかし、災害時は野菜やタンパク質を中心とした食生活を送れる状態ではありません。大きな災害が起こったときは、「生きるために配られた食べ物を食べてエネルギーを確保し、脳への司令を出すためのブドウ糖を確保する」ことが最優先です。そのため、普段炭水化物を控えていたとしても、炭水化物が含まれているお米など配給されたら積極的にもらって食べることが必要です。それに、お米で摂れる炭水化物は、体内でブドウ糖に変わるときに最も無駄なものがでない、クリーンな変換エネルギーだといわれています。また、ミネラルやタンパク質なども豊富に含まれているのでバランスのよい食材です。脳を動かすエネルギー源として最適なので、配給されたときは普段控えていても食べるように意識してください。
しかし、配給に余裕がある場合は、注意すべき点があります。例えば、パンが配給される場合、砂糖などが多く含まれている菓子パンよりも普通の食パンや甘味を抑えた種類のパンを選ぶようにします。また、可能な限り塩分の高いものも避けるようにしましょう。カップ麺が配られる場合も、汁まですべて飲みきるのではなく半分残すようにしましょう。塩分が多いレトルトのお味噌汁を選ぶときも、できるだけ減塩されているものを選ぶことが大切です。他にも、飲み物の配給があるときは、甘いジュースよりも水やお茶を受け取るようにしましょう。

タイミングによっては、避難所の配給でお弁当が配られることがあります。その場合、肉や炭水化物がメインのお弁当ではなく魚や豆類などが豊富に入っているものを選びましょう。もしもお弁当の種類があまりなくて魚や豆類が中心になっていないのであれば、家族や知り合いの方におかずを分けてもらったり、ご飯や別のおかずと交換してもらったりして協力をお願いするのもよいかもしれません。
お菓子の配給も、豆類を主成分としたものを選んだり、スナック菓子よりもナッツ類などのタンパク質が豊富なお菓子を選んだりするようにしましょう。
さらに、食事の時間も工夫することが大切です。配給されたお弁当などを一度にすべて食べてしまうと、急激に血糖値が上昇するかもしれません。高血糖を避けるには、先に半分だけ食べて2時間~3時間後に残りを食べるなどの工夫をしましょう。
災害直後は、生きることに必死になるので食事を工夫する余裕がないかもしれません。しかし、少し時間が経てば、食べ物の選び方や食事の工夫を意識する余裕ができるので、自分の体を守れるようにしましょう。
普段から食事にかなり気を遣っている方にとって災害時の食事は、「食べてもいいのか」と心配になるかもしれません。
しかし、まずは「生きる」ことを考えて医療体制が整うまで、自分の体調を確保することが重要です。
配給されたものが糖尿病に適していないからと食べない選択肢は、絶対にしないようにしましょう。

災害に備えて用意しておくもの

糖尿病で特に懸念されることは、「合併症」を引き起こすことです。合併症は、糖尿病がかなり進行している方だと起こる可能性が高くなります。そのため、災害などの非常時に合併症を起こさないためにどうすべきか把握しておかなければなりません。
最近では、いつ何の災害が起こるか分からないので防災グッズを用意している方が増えています。糖尿病の方も万が一のことを考えて防災グッズに、糖尿病の治療に必要なものを入れているかもしれません。ここでは、改めて下記のものがきちんと準備できているか確認しましょう。

・予備のインスリンや関連アイテム(インスリン療法を行っている場合)
・予備の経口薬(薬物療法を行っている場合)
・主治医の連絡先
・処方箋のコピー
・予備の血糖値測定機器

予備の薬は、2週間分ぐらいの量を用意しておけば安心です。大きな避難所の場合、2週間もあれば医療体制が少しずつ整っていくことが多いためです。インスリンも薬も2週間分ぐらいの量を用意してくことで、食事が普段通りできなくてもこれまでの生活パターンに近い状態で過ごすことができます。
もし、医療体制がなかなか整わない状況であれば、インスリンや薬の量を調整するようにしましょう。インスリンや薬の量に伴い、食事の量や時間も上手く調整することで医療体制が整うまで症状を悪化させないように意識することが大事です。
また、治療に必要なもの以外でも用意しておいたほうがよいものがあります。それは、ストレスを緩和できるものです。糖尿病の方にとってストレスは、大敵といえます。もちろん、ストレスは糖尿病だけでなくすべての病気にとってよくありません。それに、大きな地震などの災害が起こった後は、糖尿病患者が激増したとの統計があります。これほどストレスは、糖尿病を悪化させる危険因子であることに間違いありません。
強いストレスが体に感じると血糖値を上昇させるので、高血糖状態が続きます。高血糖状態は、糖尿病の症状を悪化させ、やがて合併症を引き起こす可能性が高くなります。
災害時は、健康な方でも強いストレスを感じ不調を訴える方が多くなります。そんな状況下で過ごすので、少しでも気持ちを和らげてストレスを緩和できるようにすることが大切です。自分の防災グッズへは、ストレスを緩和させるために役立つグッズを含めておきましょう。
また、時間を潰せるものも用意しておいたほうがいいかもしれません。実際に災害を受けて避難生活を送っていた方のほとんどは、「時間が有り余り過ぎて何もすることがない」「気を紛らわせないと不安や心配なことばかり考える」といっていました。電気が復旧すると避難所にテレビが設置されますが、災害に関するニュースばかりなので気が滅入るとの声もありました。不安を抱えているとストレスになったり、何もできない状態に対してイライラしたりするので、時間を過ごせるグッズを入れておくと気を紛らわすことができます。小説や音楽を聴けるプレーヤー、トランプなどの簡単なゲーム、野球ボールなど体を軽く動かせるようなものがおすすめです。
避難生活が長引く可能性が高いのでストレスをためないためにも、自分がリラックスできるものを用意しておきましょう。ただし、周りの方の配慮を忘れずに使うことが大切です。また、周りの方たちのストレスも緩和できるように貸し借りするのも理想的です。

ご紹介してきたグッズは、必ずしも必要ではないかもしれません。しかし、ストレスを緩和させることは、糖尿病の方も健康な方も必要なのであらかじめ用意しておくことが大切です。

災害時の周りにいる方の対応

糖尿病を抱えている方は、普段から食事に気をつけて出来る限り健康によいものを食べようと心掛けています。しかし、ここまで何度もお伝えしている通り、災害などの非常時では体のエネルギーになるものをきちんと摂取する必要があります。普段控えている食べ物や、普段なら口にしない食べ物でも、生命を維持するために意識して食べる必要があります。
しかし、糖尿病の方は、避難生活を送ることで症状が悪化するかもしれないとの不安や、インスリンや薬が無くなったらどうしようと心配することで食が細くなる可能性があります。こういった場合、周りの方たちが意識して「生命を維持するために必要な食事」だと本人に共有することが大切です。
もちろん、災害時は誰しもが不安で人を気にしている余裕はないかもしれません。
しかし、近くにいる人間が食べずにどんどん弱まっていく姿を見るのは心苦しいかもしれません。そのため、周りにいる方が糖尿病の方の食べている量を確認したり、もう少し食べたほうがよいなどを促したりすることも重要になってきます。また、糖尿病の方に多いのが普段控えているものを食べることに罪悪感を持つことです。そんな様子だったら、適量であれば食べても大丈夫だと説明しましょう。少し余裕が出てきたら、脂っこいものや塩分の高いもの、添加物などを避けるように伝えましょう。このように、周りの方が糖尿病の方をサポートすることで、症状を悪化させず合併症のリスクを下げることができます。
また、周りの方が糖尿病を抱えている方のサポートを行うことで「無駄に不安がらせない」「精神的な不安を煽ったりパニックになったりしないようにお互いを励まし合う」「水分補給をきちんと行うようにし、体に負担をかけさせないようにする」などを意識させることができます。
さらに、避難所での生活において「病気だからといって特別扱いできない」ことを意識させることも大切です。もちろん、健康な方よりも糖尿病などの病気を抱えている方は、体の状態が悪いのである程度考慮する必要があります。だからといって、災害を受けてつらい思いを抱えている方がたくさんいるのに、病気だからとの理由で特別扱いしてほしいとの考えを持たせることは本人にとっても悪い傾向へ向かいます。
円滑な共同生活を送るためには、病気を抱えている方も協力することが大切です。本人が自覚することも大切ですが、周りにいる方も伝えて自覚してもらい、できる範囲の協力をお願いしましょう。

災害時は、通常時よりもパニックに陥りやすいので、細かいことにも不安を感じてしまうかもしれません。だからこそ、糖尿病を抱えている本人や周りにいる方たちもお互いに協力して、病気を悪化させないように配慮することが大切です。

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